【#7】ティーシャとコラボ配信!!

【渋谷ダンジョン地下一階】


 :今来た! 

 :いよいよ探索開始か

 :くっ!? 気になって画面から目が離せん……!!


 こうして二人での配信が始まった。森の中でティーシャは俺に聞いてくる。


「そういえば、アヤカちゃんは例の"クラフト"のためにモンスターの魔力が必要なんだよね?」


「はぁ~い! もっとフリールームの中を充実させたいので、できればたくさんモンスターを倒せる場所がいいですね~~」


「ふむふむ」


 ティーシャはメイド服の袖で腕組みしながら言う。


「それならここよりも下の階層に移動した方がいいかな」


「了解でーす。その方が効率良さそうですもんね〜」


 基本的に地下に降りて行くほど強いモンスターが出やすくなる。だから、それに比例して獲得魔力量も高くなるワケだ。


「それじゃ、試しに今回は地下15階辺りに行ってみよっか? そこならあたしの”転移魔法”でひとっ飛びだよ!」


「おぉー!! ぜひお願いします!!」


 ティーシャのクラスは【ウィザード】。


 そのクラスを持つ者は多種多様な魔法を極めており、その中でもティーシャが使う”転移魔法”はそれだけで職業として成立するほど需要が高い。やはり広いダンジョンの中で移動を短縮できるのは貴重なのである。


「アヤカちゃん。そばを離れないでね?」


「ハイ!!」


 俺は足元に展開された魔法陣の中に入りながら、ティーシャに向けてキラキラとした視線を向ける。


「うわ~~、ドキドキ……!! ティーシャの魔法、初めて生で見れるの嬉しいです~~!!」


「や、やめてよ〜? そんなに見つめられると恥ずかしいよ〜!?」


 赤く頬を染めるティーシャ。そんなところも最高に可愛い!!


 :酒クズちゃん、完全にファンの目だな……

 :推しを前にしたオタクは狂うからなぁ。俺もこうなるかも

 :おまけに酔っ払ってるからますますヤバい


 そうやって俺が見惚れている間に、ティーシャは転移魔法を唱えた。


詠唱キャスト──【ワープリフト】!!」


 ◇◆◇◆◇


【渋谷ダンジョン地下15階】


「ついたー!!」


 目的地には一瞬で到着した。これが初めて体験する転移魔法……!! すごい!!


 そんな感じで感動に浸っていると、森の奥からモンスターの群れが出てきた。ドロドロとした液体のモンスター……あれは!!


「「「「ぷるぷるぷるーーーーーー!!」」」」


【ハイスライム】


 ダンジョン地下の魔力を吸って強くなったスライム。基本的に群れで行動し、冒険者を数で制圧してくる。


 :ハイスライム!

 :Bランクモンスターだね

 :だいぶ数が多いようだが……


「アヤカちゃん!! 手分けして倒すよ!! そっち、任せていい?」


「りょーかいです!!」


 俺とティーシャは背中合わせの格好となり、それぞれ別方向のスライム軍団を倒すことになった。


 まず先に動いたのはティーシャだ。彼女は両手を前に突き出し、高位魔法用の呪文を唱え出した。


「炎の神、イグルナよ。今、我に大いなることわりを授けたまえ……詠唱キャスト──【ファイア・ストーム】!!」


「「「ぷりぁ~~~!?」」」


 ティーシャの手から放たれた火炎嵐がスライム達を一掃していく。これがSランク魔法使いの実力ってワケだ!! 流石~~!!


(さて、そろそろ俺も働きますか)


 今回はティーシャに色々やってもらってる分、しっかりと頑張らねば。


 俺はグ~っと伸びをしながら腰から妖刀を抜き、ティーシャから頂いたブランデーをまた一口貰う。


「んっ……!! んっ……!! ぷはーーーーー!!」


 よし、これで充電完了。


 全身に熱いモノがともり、活力がみなぎってくる。これでスキル【酔剣すいけん】の力を思う存分発揮できるワケだ。


「──さて、行きますか」


 ゆらりと肩を下ろし、足にグッと力を込めた。そして──。


「ぷっ!?」「ぷるるっ!?」「ぷりゃぁーーーー!?」


 一つ、二つ、三つ。俺は素早い動きでスライム達を斬っていく。


 身体は羽根のように軽く、与える一撃は鉄のように重い。妖刀はまるで俺の手足のように自由自在に動いてくれる。


 そうやって夢中になっているうちに、目の前のスライム達は全員片付いてしまった。


 俺は妖刀を腰にしまい、ドローンのカメラに向かってピースした。


「ハイ! 一丁上がりでーす♪」


 :すっっっげぇ!!!!!!

 :全然見えねぇ……!!

 :速すぎてドローンのカメラが追いきれてなかったぞ!?

 :さっきまで飲んだくれてた人の実力か? これが……?


「アヤカちゃ〜ん!!」


「わっ!?」


 爆速で駆け寄ってくるティーシャに驚いた。


(っていうか、距離近くないか……!? うわわわ、めちゃくちゃいい匂いする〜〜!?)


 そんな俺の動揺に構わず、ティーシャは興奮した様子で言ってくる。


「前の配信でキマイラ倒した時から思ってたけど……やっぱSランク相当あるんじゃないの!? アヤカちゃんの強さ!!」


「ま、まさかぁ〜? それは言い過ぎですよ〜♡」


 :酒クズちゃん、ニヤニヤが隠せてないぞ?

 :まー、でもすげー実力者なのは一目瞭然いちもくりょうぜんだよなぁ……

 :この世界に10人しかいないSランク冒険者のティーシャに認められるのはやばい

 

 うーーん、確かに言われてみればとんでもない事をしてる気がする。とにかく今は自分の生活で精一杯だが。


 ◇◆◇◆◇


 こうしてスライム達を倒して一息ついた俺達は、森のモンスターのいない場所で休憩していた。


「ねぇねぇ、アヤカちゃん。もし魔力が溜まったら何をクラフトするつもりなの?」


「ん~? そぉ~ですねぇ~~」


 俺は今真っ先に足りないものを思い返した。


「とりあえず、早いところ”お風呂”を作りたいですかねぇ~~。やはり女子たるもの清潔感に気をつけないとダメですからぁ~~」


 :つーか、酒クズちゃん。結局昨日から風呂入ってないの?

 :そうだよな。におい大丈夫か?

 :元はおっさんだし臭かったりして……


「ちょっと〜!? 大丈夫ですよぉ〜!? 今朝、『ティーシャに会う前に身を清めよう』と思って、近くの川で水浴びしたんですからぁ~~♪ えへへ~~」


 :なにっ!? 

 :つまり、酒クズちゃんがダンジョンの中で裸に……!!

 :その映像は残ってないのか!?


「もぉ~~。そんなの残ってるワケないでしょ~~? ばぁ~~か♡」


 リスナーの冗談を酒の勢いで流していると、ティーシャが意外なことを口にした。


「水浴び!? いいねぇ〜!! アヤカちゃん、今度あたしも参加していい!?」


「えっ!?」


 その突然ぶっこまれた発言が、酔った頭をグラグラと揺らした。


 :おいおいおいおい

 :ティーシャの爆弾発言キターーーーー!!!!

 :美女二人で水浴び……だと!!


「ままま、まさか一緒に水浴びなんて〜〜!? 冗談ですよね〜!?」


「ふふっ、どうでしょう♪」


 からかうように笑みを浮かべるティーシャに、俺はドキドキがずっと止まらなかった。

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