【#6】推しとの配信
そして、次の日。さっそくティーシャとのコラボ配信が行われる事となった。
約束の待ち合わせ場所は、渋谷ダンジョンの地下一階。
自然豊かな森が広がるエリアの中で、俺は一人でティーシャを待っていた。
(あともう少しで集合時間……!! あぁ~!! もう心臓のバクバク止まんねぇ!! どうしよ~~!?)
そんな感じで死ぬほどソワソワしていると。
「あっ!! いたいたぁ!! アヤカちゃ~~ん!!」
「!!」
通路の奥から聞こえる声に、身体がビクッと震える。来た!! ついにこの時が……!!
「はじめまして、アヤカちゃん♪ 改めまして、ティーシャ・クラリオンだよ! 今日はよろしくね~~」
その銀髪猫耳の美少女は、メイド服の袖をパタパタさせながら駆け寄ってくる。今まで映像越しにしか見た事がない、その姿が!!
(ほ、本物だ!! 本物のティーシャだ!!)
あまりにも感動しすぎて反応が遅れ、俺は急いでティーシャに挨拶を返した。
「よ、よろしくお願いします!! 今回はコラボをご指名いただきありがとうございます!!」
「いえいえ〜♪ ごめんなさーい、突然の話で迷惑じゃなかったかな? ──あっ、すみません。いつもの癖でタメ語で言ってしまいまして……」
「そんな!? 俺……いや、わたしに敬語なんてよしてください!?」
ティーシャに敬語を使われるなんて恐れ多い!! ついでに、その流れで俺は思い切って口にした。
「じ、実はですね……わたし、以前からティーシャさんの大ファンなんです!!」
「えっ!?」
それを聞いたティーシャは意外そうに眉を上げた。
「え!? アヤカちゃん、
「そうです!! ティーシャの配信は毎回欠かさずチェックしてます!!」
「おぉ〜!? 思ったよりガチファン!? ありがと〜!!」
嬉しそうに笑うティーシャ。あまりにも天使すぎる……。
「あっ! でも、今日の配信はリラックスしていいからね? なんてたって、アヤカちゃんがゲストなんだから♪」
「あっ、ハイ……!!」
そう言っても、リラックスできる相手じゃないんだが。……とにかく努力はしてみよう。
「ちょっと準備するから待っててねー」
そう言って、ティーシャは背負っていた『魔法カバン』を下ろした。
その『魔法カバン』は一見小さくて可愛いリュックサック。だが、魔法の力により物理法則を超えた収納を実現できる優れもの。
そこからティーシャが取り出したのは──。
「はい、撮影モード起動……っと」
ダンジョン配信用の撮影ドローン。
おぉ、これがティーシャの使っているドローンか。流石に最新型。彼女のこだわりが出ているな。
「よし、問題なさそうだね!」
ティーシャはそのまま手早く配信準備を済ませ、俺の方へ振り返って言った。
「それじゃ、本番いくよ?」「りょ、りょーかいです!!」
つ、ついに始まる!! 人生初の推しとの配信が!!
◇◆◇◆◇
《配信開始》【緊急コラボ】ウワサの”酒クズちゃん”、天霧アヤカさんとのコラボ配信!!
「みんな、おはティシャ〜♪」
:よっしゃ!! 一番乗り!!
:おはティシャ~
:待ってた!! 待ってたぞ!!
:激ヤバコラボだ……!!
「さっそくだけど、ご紹介!! こちらは絶賛話題中の”酒クズ女サムライ”!!
「どどど、どうも〜!! わ、わわ、わたしが酒クズちゃんです!! よよよ、よろしくお願いします……!!」
撮影ドローンのカメラが俺を大写しにする。
そのまま恐る恐るティーシャの隣へ行くと、リスナーも待ちかねてたようにコメントが加速する!
:酒クズちゃんきたw
:ティーシャの前だからか、借りてきた猫状態だなw こないだは俺って言ってたのに、わたし口調になってるわw
:どっちも可愛いな!
:ダブル美少女コラボ最強すぎんだろ!!
さっそく大量のリスナーが押しかけてくる中、ティーシャは慣れた口調で進行してくれる。
「みんな、聞いて~? これさっき知ったんだけど、アヤカちゃんね……みんなと同じ
:マジか!?
:じゃあ、やっぱあの配信みてたんじゃないか!!
:ちなみにファン歴は?
「えっと……一応初期から毎回見てますけど」
:なにっ!?
:おいおい、すげーなw 相当数あると思うが
:名誉猫民ですな
:女子でそこまで熱烈なファンもいるなんて流石はティーシャ
そんなコメントに苦笑いしている間に、なにやらティーシャが魔法カバンをガサガサやってた。
「そうだ、アヤカちゃん。初めて一緒に配信する記念にね、プレゼント持ってきたよ~。──じゃーん♪ あたしの世界から持ってきた最高級ブランデー『シャリア・ブランド』だよ〜♪」
ティーシャが取り出したのは大きなボトルだった。その中で、琥珀色の液体がトロトロと動いている。これは……!!
「こ、こんな高いもの頂いちゃっていいんですか!?」
俺も異世界のお酒についてはあまり詳しくないが、それがどういうものかは流石に知っていた。
「もちろんだよ♪」
それからティーシャは思い出すように続けた。
「こないだの配信で見せてくれたスキル【酔剣】──その発動のためにはお酒を飲む必要があるんでしょ?」
「そ、それはそうですが……」
「でしょ? ──さぁさ! グイッとどうぞ!!」
:いけーー!! 酒クズちゃん!!
:わくわく!! わくわく!!
ティーシャ、リスナー勢共に期待の眼差しを向けてくる。
……ならば、その期待に応えないワケにはいかない。いくぞ!!
「んっ……!! んっ……!! ぷはーーーーーーーーー!!!」
:ふぅーーーー!! いったーーーー!!
:いいぞーー!! 酒クズちゃん!!
「アヤカちゃん。どう? 気分は?」
横から聞いてくるティーシャに、俺は
「ふへへへへ♡ 最高で〜〜す♡」
お酒を飲めば幸せ~~~!! 緊張なんてどっかに吹っ飛んでいった!!
こうしてお酒で心も身体も満たされた俺は、ティーシャとの冒険に出かけることとなった。
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