夏だ!海だ!水着だ!:2

「かき氷の~…ブルーハワイ一つと、いちごと抹茶一つずつお願いしま~す」

「分かりました、少々お待ちください」

 さっき通知情報を見てたんだけど、どうやらこのサマーイベントからNPCが前哨基地に追加されるらしい。

 更に言うと、魔王側にも側近としてNPCの人格付きキャラクターを生成することができるとか何とか。

 前々からちょっと物寂しいとは思ってたんだよね~。鍛冶屋とかショップとか、誰も居なかったし。

 支払いはカードで…、って、自動的にポイントが引かれるだけなんだけど。

「お待たせしました~!」

 NPCの店員さんからかき氷を3つ受け取って、すぐそこで待っているトキハちゃんと純白ちゃんに渡す。

「タリスタさん、白が好きなのに抹茶なんですね」

「みぞれとか練乳よりも、味はこっちの方が好きなんだよ」

「そうなんですね」

「純白ちゃんって結構甘党だよね~」

「甘いものは正義。でもたまには辛い物も食べる」

「そうなんだ。知らなかったな~。…あ、ブルーハワイ一口いる?」

「じゃあ、貰ってもいいですか?」

「分かった。はい、あーん」

 かき氷をスプーンで掬って、トキハちゃんの前に差し出す。

「…ん、美味しいです」

「それは良かった~」

「…なんだかさ、姉妹みたいだよね。2人って」

「そうかな?」

「リリィさんは私と言うより『皆のお姉さん』って感じがしますけど…」

「まあ、それはそうだね」

 皆のお姉さんかぁ…。

「そんなに褒めても何も出ないよ~?」

「別に褒めた見返りなんか求めてないですってば」

「でもせっかくなら、ちょっとやってもらいたい事があるんだよね~」

「まぁいいけど…何するの?」

「リリィさんにスク水を着てもらう」

「…へ?」



 所変わって、釣具店兼水着レンタル屋。

「…うぅ…結構恥ずかしいねこれ…」

 私はスク水を着させられていた。

「珍しいですね…リリィさんが恥ずかしがるのって」

「私にだって恥ずかしさくらいあるよぉ~…!」

 紺色で、肌にピッチリと密着した水着の感覚。なんだろう、露出度的には普通の水着の方が多いんだろうけれど…。

「こっちの方が恥ずかしい………」

 学生の時は何とも思ってなかったのに…。

「で、でもまあ…泳ぎやすくはある…のかなぁ…?」

「…リリィさん…本当に胸大きいですね…」

「スク水がぴったりのサイズだから、体のラインとかが見やすくなってるんだろうね」

「あ、あんまりジロジロ見ないで…ね?」

「っ…かわいい…」

「なんかこう…ギャップが凄いねリリィさん…。こういうの喜んで着てくれそうなのに」

「二人の中の私のイメージはどうなってるのさぁ~…。というかもう脱いでいい…?」

「駄目に決まってるじゃないですか」

「…なんでぇ…?」


「うぅ…これなんて辱めなの…?せめて、せめてラッシュガード…」

「ダメです」

 私の提案はニッコリ笑顔のトキハちゃんにあっさりと切られてしまった。こういうのって私よりもトキハちゃんとか純白ちゃんの方が似合うのにぃ~…。

「リリィさんはもう少し自分の魅力に気付いてください。美人なんですから」

「普段なら嬉しいけどさぁ…」

 少なくともこのタイミングで求めている言葉じゃないんだよぉ~…。

「というか…リリィさん本当にリアルの姿をトレースしてるんですか…?」

「え?うん…そうだけど…」

「羨ましい…脚とか凄いじゃないですか…胸も大きいし…お腹の辺りはシュッとしてますし…」

「あ、あのだからさ…スク水でこんなまじまじ見られるのは恥ずかしいからぁ…っ!」

 せめてラッシュガードをください…。本当にお願いだから…。


「よし…満足しました。それじゃあスク水返しに行きましょうか」

「はぁ…よかった…」

 インベントリを開いて、装備をスク水からいつもの水着に戻す。

「うん…やっぱりこっちの方が良いね」

「露出的にはこっちの方が多いですけどね」

「なんであんなに恥ずかしかったんだろ…」

「もう一回着ますか?」

「それは絶対に嫌だよ?」

「そうですか…」

 …そんな残念そうな顔されても、着ない物は着ません。

「むぅ…リリィさんの意地悪…」

「そんな事言われても、着ない物は着ないよ。それに、私よりもトキハちゃんとかの方がああいうのはずっと似合ってるよ。私はもう学生じゃないんだからさ」

「まぁ…水泳の授業でスク水は着たりしますけど…」

 本来の用途はそれだけどね?スク水ってスクール水着の略だし。

「ま、まあともかく。もし機会があったらまた着てほしいです」

「まあ、機会があったら…ね」

「それじゃあ、次は釣りでもしようか。ダイビングは…今は良いかな…ちょっとトラウマができたし」

「あはは…ごめんって…」

「でも良いですね、のんびり釣りでもしましょうか。…水着である必要性はないですよね?」

「まぁじゃあ、普通の服に着替えてから釣りしよっか。何が釣れるかな~?」

「魔物とか釣れたりしませんかね?」

「それ釣れてもどうするのさ…?」

「スコアに加算されるだけじゃない?」

「私そんな物騒な釣りしたくないんだけど~」

「とか言いつつ、結構乗り気じゃないですか」

「まあね~。釣りは好きだから」


――――――――

作者's つぶやき:あ~~~テスト終わった~~~!!!…はぁ………。

さて、リリィさんって結構なんでもできますよね。

スク水を恥ずかしがってたくせに機会があったらまた着るって言ってるのもなんだかこう、意外とノリがいいですよね。

正直リリィ…もとい東海さんに優しさ要素はそこまで求めてないんですよね。彼女の行動原理は基本的に『楽しそう・面白そう』ですから。

まあ結果として後味や胸糞が悪い事をしないので優しいっちゃ優しいんでしょうけれど。

さてさて、リリィさんは何を吊り上げるんでしょうかね。大物が釣れると良いですね~。

というかダンジョン要素が…。次々回くらいにはカフェにも行かねば…。まあどうにかします。

――――――――

よろしければ、応援のハートマークと応援コメントをポチッと、よろしくお願いします!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る