第19話 この世界は色々と複雑なようである

「急に手を出して済まなかった。 シャー次郎」


俺は目の前で腕を組む甲冑姿のサメ…基、シャー次郎に頭を下げた。

シャー次郎ってなんだよ! というツッコミはさておき、こうしてマジマジみつめても普通に厳ついサメである。

種類的にはホオジロザメなのだろうか…めちゃくちゃ怖い。


「いやはや、こちらこそ申し訳ないでござる! よもやこの森で人族の方を見つけ…興奮してしまうとは――――それにしても、隣の御仁は…ダークエルフでござるか!? これは、これは素晴らしい筋肉でござるな! ダークエルフとはひょろひょろのごぼうみたいな連中だと聞いておりましたが。 これは素晴らしいでござるなぁ!」

「ん~…ダークエルフを”ごぼう”呼ばわりするって事は、あんたは魚人族って認識であってるかい? というか、こんな厳つい見た目の連中が居たんだねぇ」

「ふっはっはっ! あの連中と一緒にしてもらっては困るでござるな! 魚人族の中でも異端中の異端とされた存在! シャーク族でござるぞ!」


というか、魚人族にダークエルフ…エルザに詳しくこの世界の内情を聞いてはいなかったが、結構色々な種類の連中が居る感じなんだな。


「な!? あの”厄災時代”に敵味方関係なく蹂躙し続けたという! あの!? シャーク族だっていうのか!? そんな、あいつらは戦時中に絶滅したんじゃ!?」


え? 何!? 厄災時代って…スルー出来ない位重要なキーワードが聞こえて来たするんだが?


「それがところがどっこいしょ。 我々シャーク族は各地に散り散りになり…生き延びていたのでござるなぁ! ふっはっは!」

「というか待て…お前達シャーク族はこの私…と、真央――人間を判断できるのか!?」


なんとも驚いた様子で俺の肩を叩くエルザは「こいつと私が認識できるのか!?」という驚きの表情をみせていた。


「愚問っ! 我々シャーク族は進化を続け! この目も良くなったのでござるよ!!   

2人の見分け等造作もないでござる! ぬっはっは! 人間、ダークエルフ、人間、ダークエルフ!」


解りやすく大きな頭部を動かし、俺達2人を種族名で呼びながらジッと見つめるシャー次郎。

その行動に対して偉く感動した様子を見せるエルザ。

何が何だかわからない俺は首を傾げならただただその光景を見つめるだけだった。



――――――――――――それから数分後。



「と、いう訳で真央殿。 拙者も仲間に入れてほしいでござる!」


シャー次郎は綺麗な土下座を俺に向かって披露していた。


「いや…こいつは無理だと思うぞ? …真央」

「なんでぇ! エルザ殿ぉ! 先程はあんなにもフレンドリーな対応をしてくれたではござらぬかぁ! そんな殺生な!」

「ま、まぁ…エルザがそう言うってことは理由があるんだよな?」


シャー次郎の理由を聞くに、彼は武者修行の為この森へやってきたが…エルザと同じく出る事が出来なくなってしまい、数ヶ月以上…森の川の中で過ごしてきたらしい。

というわけで、俺達の拠点の仲間入りしたいとのことで今、こうして頭を下げているわけだが―――エルザがあまりいい顔をしていなかった。


「というか、シャー次郎。 おまえ、忘れてるんじゃないだろうな? 今まで”水の中”に居たから何不自由ない生活が出来ていたんだ。  が、しかし…魚人の連中は身体が濡れてないと陸上では3日しか行動できないんだろ?」

「あ…そうでござった…」


思い出した!と言わんばかりの表情を見せるシャー次郎。

え? こんな人間っぽいフォルムをしてるのに、3日しか陸上で活動できないの!?


「という訳で、真央! こいつとはここでお別れだ! じゃそういう事で」

「そうか…残念―――」

「いや! 滅茶苦茶諦めるの早くないでござるかぁ! 待って待って! 待ってほしいでござるよ! 確か! 確か、拠点までは今この川がかなり近いんでござろう!?   

ならば! 拙者の水遁の術があえば! この水を拠点まで運ぶことが可能であります!」

「「す、水遁の術!?」」


そうか! 俺達は忘れていた、隣の筋肉ダークエルフの魔法適性が低いせいですっかり頭になかったが…この世界は剣と魔法の世界なのである。

という事は、魔法が使えても…忍術が使えてもなんら不思議な事ではない。


「ご覧あれ。 我が、水遁の術を!! はぁぁぁぁぁ!」


シャー次郎が印を結ぶと川の水が一気に汲みあがり…大きな水の球体が頭上に出来上がってゆく。


「「『お、おぉぉぉぉ!』」」


俺達の目はその不思議な光景に釘付け、この能力があれば1週間とは言え水を運び出す事も可能である。


「シャーク族の力! とくとご覧あれ! 水遁の術!!」


更に印を結んだシャー次郎の手からは大量の水が!!―――


「「『は???』」」


チョロチョロチョロ~…


と思った俺達だったが、印を結んだ指先からまるで小便のような勢いの水がちょろちょろと飛び出て来た。


「ぐぬぬぬ…ぐぬぬぬ!!! はぁぁぁぁ!」


チョロチョロチョロ~…

それはもう凄まじく必死な形相のシャー次郎…あの表情からしてこれが限界なんだと思った俺達は―――


「よし、帰るかエルザ」

「あぁ! そうだな…拠点の片付けをするとしようぜ!」

「あぁ~!! 待ってほしいでござる!! おーーーい!! おーーーーーーーーい!!」


―――――――――――――――――――――



更新がおくれて申し訳ないです>< またまた濃い新キャラ、シャー次郎登場!

そんなに現実は甘くはないということですね(笑)

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