第2話

江戸時代の人ともテレパシーで会話出来るのだろうか。

「こんにちは、私、水菜美です。江戸から来られたのですか?」

「こんにちは。江戸から来ました。私、葛飾北斎です。」

江戸時代の人と会話が出来るなんて嬉しいが、テレパシーの会話は意外と難しい。

きちんと考えてから伝えなくてはいけない。普段どれだけ気軽に会話しているのが

わかる。

「葛飾北斎って、あの葛飾北斎ですか?」

「私をご存知なのですか?」

本当なのだろうか、こんな時嘘をつくとは思えないが。

葛飾北斎さんは世界から称賛される浮世絵師で、とても長生きされますよと言おうとしたが、やめておいた。

「ん・・・名前くらいはですけど・・・私、江戸時代の未来から来ました。」

「江戸の未来の人ですか。その手に持っている物は何ですか?」

「これはスマホといって離れている人と会話をしたり、文章を送り合ったり、色んなことを調べたり出来る物です。さっき落としてここが割れてしまったのですけど。」

そう言いながら割れた所を指で触った。こんな説明で大丈夫だろうか。

「未来にはそんな便利な物があるのですね。」


北斎さんにも聞きたいことはあるはずなのに、あまり聞けない感じがした。

過去を知るのはいいが、未来の話はしていいものかどうか。

北斎さんも未来のことは聞こうとしなかった。


「私、そろそろ帰ります。北斎さんはどうされますか?」

「私は、もう少しこの景色を目に焼き付けてから帰ります。」

「お会い出来て本当に嬉しかったです。」

「私もです。ありがとう。」

「また、お会い出来るでしょうか?」

「きっと、出来ますよ。」



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