Day1-2 夜
狩人同盟シオケムリ支部。バケモノや魔法に関する困りごとならお任せあれ。
専門家である退魔師がどんな事件でも解決します。
誰だよ、こんなクソみてえな売り文句を考えたのは。
魔法はそこまで万能じゃないし、法律がある以上限界がある。
まあ、魔法使いが絡んだ時点で、ウチらに回される仕事ではあるんだけれども!
あの後、事務所で事情聴取を受け、解放された。
俺は花澤くんを近くまで送ることになった。
ストーカーは捕縛され、警察に引き渡された。
話を聞いた限り、いじめみたいな陰湿な嫌がらせを毎日のように受け取っている。
変なメッセージが積み重なり、今日につながった。
「何であんだけため込んでたんだよ。ご飯のおかずにでもしてたの?」
「それが食べれれば、どれだけ楽だったか……」
「絶対に食うなよ。本当に何ですぐ言わなかった?
人を頼るのは難しいかもしれないけど、さすがにアレはダメだって。
今後はウチらで対応するから、気軽に相談してよ」
「へえ、さすが狩人。頼りになるね」
「頼りにしてくれよ。大体、魔法を使う時点でおかしいんだって」
そもそも、あのストーカーは魔法使いですらない、ただの一般人だった。
なぜ、ピンポイントで位置を特定できたか。
「最近、変なこととかなかった?
頼んだ覚えのない荷物とか変な写真とか、もらったりしてない? 大丈夫?」
「この前のイベントで差し入れもらったくらいかな。あとは、投げ銭とか……」
「貰ったもの全部持ってきて! 絶対にヤバいのが混ざってるから!」
背中に悪寒が走り、思わず両肩を掴んでしまった。
危機感がないというか、何でそんなにのんきでいられるんだ。
「手紙とかそんなのばっかりだけど」
「魔法って一般人に分からないように仕組まれてんの! 変な呪文を模様っぽくしたり特殊なインクで書いたり手紙そのものに魔力が込められてたり……キリがないからこれ以上言わないけど! とにかく! 思っている以上に悪意に晒されてんの!
お願いだから頼って! マジで死ぬかもだから!」
どうしよう、思っている以上にヤバいかもしれない。
平穏無事に過ごしてきたのが奇跡なくらいだ。
「もう散々聞いたかもしれないけど、個人でやってる人はマジで狙われやすいのよ。
これが事務所とか会社だったら、まだ守ってくれるんだけど……この際だし、親衛隊でもやろうか? 受付係でも何でもやるよ?」
「受付係が必要なほど、物はもらってないんだけどな。
それに、イベントやるときも警備員が一応、いるんだけど」
「どーせ全員バイトなんだろ? これだから危機感ない有名人は……。
まず、一般人に魔法を使うこと自体、やっちゃいけないことなの。
暴力に取り憑かれたそういう馬鹿をウチらは取り締まらないといけないわけ」
「そこで狩人の出番ってことか」
「そうでなくても、退魔師が出てくる時点でそれだけヤバいことが起きてるんだって。もうちょっと危機感持ってくれ」
こればかりは本当に何度も言い聞かせないといけない。
イベント会場にバケモノが出てきたらどうするつもりなのだろう。
「結局、露木君は何者なんだ? その退魔師とやらは学生でもできるもんなの?」
「ライセンス自体は満18歳から取得できる。
活動することもできるけど、あまりいい話は聞かない。
俺は施設の方針で無理矢理狩人同盟……さっきの事務所に入れられたけど、人間を知ったほうがいいってことで、大学に行ってる。
真面目にやってんだよ、これでもさ」
「……まさか、年上だったりする?」
「どーだったかな。年齢なんざ覚えてねえや。
でも、留年はしてないから同じくらいなんじゃないの?」
自称20歳の退魔師か。
嘘は言っていないのに、一気に胡散臭くなった。
「あまりいい噂を聞かないのはそれが理由か?」
「そういう仕事だからねえ、敵は自然と増えるよ。施設にいた連中はどいつもこいつも不良ばっかりで話にならないし、他の学生は退魔師ってだけで怖がるしさ。
友達いないのよね、俺」
今のところ、人を知ることができていない。
おそらく、超えてはいけない一線を知るためなのだろう。
その気になれば、飛び越えてしまうだろうから。
「前から気になってたんだけどさ、何で異世界関係論なんて受けようと思ったの? 単位が簡単に取れるとか変な噂が流れてたりする?」
「そんな話はまったく聞かなかったな。たまたま、あの時間が空いててさ。
家に帰っても落ち着かないし、どうしたもんかなって思ってたら見つけた」
「……よく参加しようと思ったね?」
「オカルト好きってイメージがつけば、変な奴も来ないだろうと思ったのは確かだな」
「マイナスイメージにはならないのよ、それ。
余計に変なのが来るだけだから」
いつも思うけど、変に度胸があるんだよな。
講義には積極的に参加せず、人間観察しているのに人望あるし。
「いつも魔法とか異種族とか、意味不明な話ばっかりしてるけど。
ちゃんと理解できてる? 今度、教えようか?」
「助かる。半分くらい頭に入ってこないんだ」
「よし、講義の後に勉強会だな」
家の近くまで送り届け、手を振って見送った。
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