中学生の小生には蛇が大好きな友人がいたんだよ。


それでいろんな種類の蛇を飼っていて、家に遊びに行くと必ず餌やりをさせて遊ばせてくれた。


そのこは鈴木くんって言う男の子だったんだけど蛇はみんなに気持ち悪がられるって言って小生以外の友人には蛇を飼っていることを内緒にしていたみたいなんだ。


そもそも鈴木くんが気の弱いタイプでいつも休み時間壱人で本を読んでいる人間だったからね。


蛇気持ち悪いなんて言われた日には立ち直れなくなって学校に来れなくなることが本人にもわかっていたんだろう。


それで意地でも蛇を飼っていることや蛇が大好きなことを小生以外の人間には言わなかった。


それで特に鈴木くんも困っていなかったし、小生も二人だけの友人の秘密というものが嬉しかったんだよ。


そんなある日、皆が口を揃えて嫌がる家庭訪問の季節がやってきた。


その日は早めに帰れることを喜ぶ生徒もいたが皆担任が自分の家にやってきて評価などを母親の前で言われる日は縮こまってしまっていた。


小生の学級訪問は最終日だったが鈴木くんの家庭訪問は初日の1番目だった。


小生は家庭訪問が終わったタイミングで鈴木くんの家に遊びに行ったが


「もっと外で遊んで、友達と関わりを持ちましょうって言われた」


と暗い顔をもっと暗くしていたっけ。


悲劇は突然訪れるもので次の日の朝の会で鈴木くんは今までみんなに隠していた秘密を担任から暴露されてしまうことになった。


当然担任もわざと鈴木くんを陥れようとしていったわけでは無く、純粋に人の家がどうだっかたと話した会話の流れでポロッと言ってしまったようだ。


「先生昨日は家庭訪問に行ってきました。


みなさん自分の部屋に色々趣味を持っていて素晴らしいですね。


先生が壱番驚いたのは鈴木くんのお部屋ですね。


彼蛇が大好きなように鈴木くんのお部屋には綺麗に並べたれた飼育ケースでたくさんの種類の蛇が飼われていました。


みなさんも自分が好きなもを突き詰めたり趣味として収集して良い趣味習慣を送ってみるのもいいですね。」


僕と鈴木くんは真っ青になっていた。


鈴木くんは気持ち悪いと馬鹿にされることを怖がって。


小生は二人だけの秘密がなくなってしまったことに対しての表情の変化だった。


朝の会が終わり授業の間の休み時間になったとき、クラスの中心人物のグループが鈴木くんの机に集まっていたよ。


みんなも蛇が好きでお話を聞いているのかとも思ったが現実はそんなに彼に寄り添ってはくれなかった。


「いつも教室の隅っこにいてきもい。」


「なんで蛇なんて飼ってるの?キモくね?」


「あれが可愛いとかどうかしてる」


「やっぱり蛇皮にして財布とか作るために育ててるの?」


彼に対する敵意が含まれた話題作りに見せかけた悪口がポップコーンのようにあちらこちらから放たれていた。


その日からだ。


鈴木くんが蛇男としていじめられるようになってしまったのだ。


翌日から下駄箱の内履きが行方不明になり


起き勉の教科書にはマイネームで悪口を書かれ


わざと引き出しに死なせた蛇の死骸を突っ込み


トイレに閉じ込めて上から水をかけたり。


これだけでは済まないくらい酷いいじめを日常的に受けていた彼は日に日にやつれていきそしてパッタリ学校に来なくなった。


小生が遊びにいけば前までのようにもてなしてはくれたけれどあの頃の心の底からの笑顔は無くなっていた。


鈴木が不登校になって壱ヶ月後、運動会が開かれた。


練習していないから行かないという鈴木くんを無理やり担任は引っ張って運動会の場に連れてきた。


鈴木くんにリレーと綱引きに出るんだと促して。


一ヶ月外に出ず布団にこもっていてそもそも元から運動が得意ではなかった鈴木くんが運動会を楽しめるわけがなく、鈴木くんはお前のせいで負けているんだとジリジリ追い詰められていった。


鈴木くんは常に自分の体操着の裾をぎゅっと握って俯いていた。


そして運動会が終わって振替休日を挟んだ火曜日。


壱番早く学校につく小生に扇風機の根元から紐を垂らして首を吊っている鈴木くんは発見された。


鈴木くんはいじめと精神苦痛に耐え切れなくて中学壱年生という若さでこの世から旅立った。


友達を壱人失うことは言い表せないくらい寂しくて悲しかったけれど鈴木くんのお葬式よりも小生はこの後取り残された蛇たちがどうなってしまうのかが心配だった。


そのまま目立った友人もいない鈴木くんの葬式は終わり彼は静かにクラス名簿から消されていった。


担任は自分があの時口を滑らせてしまったと精神を病んで学校に来なくなった。


全くその通りだと思うから小生は彼の心配などしなかったね。


本当に担任が余計なことを言わなければ小生は鈴木くんとそれなりの中学校生活を送れていたと思うしもっと可愛い蛇の話を聞けていたと思う。


鈴木くんの葬式が終わってすぐ、いじめグループの主犯格の男に変化が訪れた。


小生にしか見えていないのかはわからないが鈴木くんの家で見た蛇によく似た鱗なのかアザなのか、よくわからないものを項に作っていた。


声をかけようかとも思ったが小生の友達を奪った人間に声をかける気になんてなれずにしばらく観察することにした。


どうやら毎日少しずつ範囲を伸ばして言っているようで首のあざの範囲が広がるごとに目に見えて体調が悪くなっていた。


もう少しで完全にうなじから首輪のようにぐるっと繋がると思い始めた時、いじめ主犯格の男だけではなくいじめに加担した伍名程度の男児の首にも同じものが見え始めた。


そしてついに首にぐるっとアクセサリーをつけたかのように蛇の皮は進んでいった。


小生がその主犯格を見たのはそのひが最後になった。


何も喉に詰まっていないし首を吊ったわけでもないのに自分の部屋で窒息して死んでいたようだ。


よほど苦しかったのだろう。


喉をかきむしっており痛々しいミミズ腫れが首にいくつもあったそうだ。


蛇の皮が項に見えた他の奴らも同じようにして首の蛇皮が輪っかのようにつながったとき、皆同じように何もないところで窒息して死んでいたようだ。


蛇の呪いか鈴木くんの恨みかはわからないがザマあないと思う。


だいぶ爽快だったね。


このことは学校でも問題になったがこのメンバーがいじめをしていたことも変死したことも鈴木くんの存在もお金や権力で揉みけされなかったことになったようだ。


小生があの中学校を卒業して何年も経ったがいまだにその頃の思い出は失われることはない。







あ、そういえば


鈴木くんが飼っていたペットはみんな行方不明になったらしいよ。


鈴木くんの火葬の日、親戚に譲る予定で話を進めていていざ渡そうと飼育部屋に行った時には飼育ケースからいなくなっていてもぬけのからだったらしいよ。


不思議なこともあるもんだね。






鈴木くん 享年14歳

身長132センチ体重32kg 蛇が大好きな蛇博士。

小生によくネズミを捕まえさせて餌として献上させていた。

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