辰
小生にはとてもよくしてくれたおばあちゃんがいてね、少し前にというかもうかれこれ5年ほど前に大往生で亡くなったんだ。
小生は大のおばあちゃん子で育ったからとってもとっても悲しくてくる日も来る日も泣いたよ。
そんな中でもおばあちゃんの身の回り整理は続いていってついにおばあちゃんの家も売りに出されることになった。
そして売りに出してすぐ、その家は若い夫婦に買われたらしい。
家を売ったお金は全て小生に相続するとおばあちゃんの遺書に書いてあったらしく売れたお金は小生の貯金口座に落ちていた。
その夫婦は子供ができた時のことを考えて少し古いが庭もあり日当たりも良いこの家を選んだらしい。
夫婦が思い描いていたのに値段も家の様子もピッタリだったらしいが壱つだけ余計なものがあったらしい。
それは庭に備え付けられている石の古井戸だ。
おばあちゃんはその移動には水竜様が住んでおられて毎日その井戸の中に生米とお酒を入れていた。
でも幼い頃の記憶だからいつまで続けていたのかはわからないが。
おばあちゃんは尊いものとして敬っていたが子供ができて落ちたら大変だとその夫婦は邪険に思っていたらしい。
井戸の魂を抜かずにコンクリートで蓋をしてしまったらしい。
知っている人も居ると思うが井戸や水の流れを止める時はそこにいらっしゃる神様の魂を抜いてから閉じないと神様が閉じ込められてしまう。
閉じ込められた神様は苦しくて開けてもらおうと災いを起こすらしいがこの夫婦はそんな非科学的なこと、信じなかったそうだ。
そしてその夫婦は壱つの心配事も完全に消し去り悠々自適におばあちゃんの家で暮らし始めたらしい。
そして引っ越してきてすぐ、お腹に赤ちゃんが宿ったらしい。
夫婦の喜びは大変なものでまだ安定しない時期から赤ちゃんの家具を買ったりしていたそうだ。
だが次の検診の前日、残念なことに月の物が来て子は流れた。
初めての妊娠ともあり母親は自分を責めてひどく落ち込んだそうだ。
だが検診的な夫の介護のもと精神も身体も元気に復活してその参ヶ月後にまた妊娠した。
素晴らしい懐妊速度だよ。
だが今回も無情なことに赤ちゃんは天へ帰ってしまった。
そこから夫婦は狂ったように子作りに勤しんだ。
思い描いた幸せな家庭を現実とする為に。
家もあって庭もあって後は子供がいれば理想が完成する。
だが結果は全て無情なもので妊娠発覚してから一ヶ月以内に全員流れてしまったそう。
一年に肆回の流産を肆年菅繰り返した結果最終的に夫婦の精神は壊れてしまったそうで、折角井戸を埋めてまで作った理想の家を手放して二人とも実家に帰ってしまった。
後に残った家は住むと子供が死ぬという不吉な噂が流れて人が入らなくなってしまったらしい。
そしてその後井戸が問題なのではと気がついた不動産屋がコンクリートで蓋をされてしまった井戸を開いたんだってね。
そうしたら水に沈まずに浮かんだ状態の水子の亡骸が拾陸体、出てきたらしい。
水竜様の怒りを買った夫婦が生まれる前の我が子を連れて行かれてしまったという噂が流れてさらに買い手がつかなくなってしまい
しかもどれも性別がわかる前の状態だったらしくその状態を見た工事の人はPTSDを発症して入院してしまったそうで。
水竜様を怒らせてはいけないと言う風習がさらに根強く残ってしまったよ。
なぜそこまで詳しくわかるかって?
今君が小生の話に耳を傾けているこの家、此処がおばあちゃんの家であってね
つまりはそう言うこと。
帰るって?
じゃあ井戸の水竜様に挨拶してから帰るといいよ。
足を滑らせて落ちて行かないように気をつけて。
毎日お米とお酒をお供えしているから怒ってはいないと思うけど万が一があるからねぇ。
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