小生はおばあちゃんが大好きだからまたおばあちゃんのお話をしてもいいかい?


勿論いいよねうんうん、ありがとう。


小生は高校生までは色々あっておばあちゃんちでおばあちゃんと二人で過ごしていたんだ。


そんな小生は小さい時から幾つもおばあちゃんにおもちゃを貰ってね。


当時人気だったヒーローの変身セットとかではなかったが木の小さなピアノや将棋やら剣やら…昔おじいちゃんが作ったと聞いたおもちゃを貰っていたんだ。


その中で乗って遊ぶ木馬が壱匹いたんだよね。


小生はそいつを時には相棒に、時には敵に、時には勉強の椅子になんかにして毎日遊んでいたんだ。


もう小生が小さい時からずっと使っているし小生が生まれる前におじいちゃんが作ったものだったから小生の手に渡った時点でもうだいぶ古かった。


ある日小生は木馬を敵兵士の乗る馬に見立てて戦っていたんだ。


勿論おじいちゃんが作ってくれた木刀を振り回しながら。


子供って可愛いもので技の名前を叫びながらめっためたに木刀を振り回していたんだ。


だが小生は間合いを間違えてしまってね。


全力で振りかぶった木刀が大きく馬の首に直撃し、木馬の首がゴトリと鈍い音を立てて畳に落ちてしまったんだ。


もう首からボッキリ折れて木馬としては使えない。


お気に入りのおもちゃだったから泣きながらおばあちゃんの所に行ったんだ。


そうしたら小生がお昼寝している間にボンドで止めて直してくれると慰めてくれたんだ。


お昼寝から起きたら木馬は直っていてまた遊べると小生はおばあちゃんに何度も感謝したね。


そうしてメソメソ泣きながら日の当たる縁側でお布団をかぶってお昼寝したんだ。


問題が起きたのは夢の中だった。


夢に入ったことはまだわからなかったが何やら大勢の声がして、小生は夢の暗闇の中で目を開けたんだ。


そうしたら小生は仰向けの状態でまな板のような大きいものに体をぎちぎちに縛り付けられていて、本来上が見えるところからは大きな機械音を立ててノコギリの歯がゆっくりゆっくり降りてきていたんだ。


夢だと気がつけなかった小生はもう無我夢中で縄を振り解いて逃げようとしたさ。


ただ現実…夢は無情なものでどうやっても解けられず逃げられなかった。


そのうちに喉に回るノコギリの歯が当たったんだ。


夢なのに痛覚歯しっかりあって神経を無理やり粗塩で撫でられるような激痛に襲われた。


幼い子供が体験していい痛みではなかったかと思われたよ本当に。


さらに刃は小生の首にめり込んでもう死ぬんだと思った時、パッとそのノコギリの刃が消えてね、馬面をした人間が上から息がかかりそうなほどの距離に表れたんだ。


馬面っていうのは馬みたいな顔の人間とかではなくて本当に馬だったんだ。


みんな大好きペンギンがモチーフのあの店に売っているような馬マスクのもっと馬な感じ。


その馬はいやにぎょろりとする瞳で小生を見つめて言った。


「痛いやろ。痛かったんやで。ちゃんとごめんなさいしいや。」


この台詞で小生は夢だったことに気がつき泣きながら覚醒したよ。


起きた頃には木馬は首をピッタリくっつけてまた遊べるようになっていた。


小生はおばあちゃんにありがとうをいう前に昼寝の恐怖から覚めた泣き顔のまま木馬に抱きついて何度もごめんなさいをしたね。


そんな小生に直ったから気にしなくていいと背中を撫でてくれてあの痛みももう忘れてしまった。


それからおやつをいただいて夕ご飯の前にまた木馬と遊んで、ご飯を食べてお風呂に入り、また木馬と遊んで夜の布団に潜った。


木馬さん明日からはもっと大事に遊びますともうすっかり許された気になって眠りに落ちた。


そうしたらどうだったと思う?


許されたと思ってすっかり眠りこけていたのに、また夢で小生は板に縛り付けられていた。


勿論上からゆっくり降りてくるノコギリも健在で。


小生はこれもまた夢だなんて気が付かず死に物狂いで痛みと死から逃げようとしていた。


また喉を切られると思った時、今度は皮膚に触れて止まった。


恐怖から閉じていた目を恐る恐る開けるとまた馬面が小生の眼前スレスレに居てね。


今度はなんて言ったと思う?


「謝ったからって許さんで。」


ってね。


幼い小生はその日謝罪をしても許されない過ちがあると知ったよね。


だからその頃からだいぶ大人びた、悪く言ったら静かでロクに喋らない友人も作らないつまらない子供になってしまった。


そしていつからか成長した小生は木馬と遊ばなくなり最近になって思い出して探してみても見つからなかった。


「俺のこと無くしたやろ」


って夢に出てくるかと思ったね。


あの日の夜以降小生の夢にはあのノコギリもあの馬面も二度と出てきては居ない。

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