第2話 感謝と高級ミルクティー

数日後の8月2日。

幸壱こういちは中学の時から付き合いがある親友の色島しきしま大助だいすけに呼ばれて“昼梟ひるふくろう”と言う喫茶店に来ていた。



「ほい。これ、誕生日プレゼント。」


そう言って大助は紙袋を幸壱に渡す。


「わざわざこれを渡すためにこっちに帰ってきたのか?」


そう聞きながら幸壱はプレゼントを受け取る。


「まぁな。今月時間空いてるのが今日しかなかったから。」


そう大助は答える。


「そんな忙しい中、ありがとな。

で?中身はなに?」


そう幸壱が尋ねると大助は開けてみなと手でしめす。


その指示に従って幸壱は紙袋を開けて中に入っている物を取り出す。


「…インスタントのミルクティーか?」


そう少し横長の四角い箱を手に持った幸壱は尋ねる。


「あぁ。でも、その辺のスーパーに売ってるような安物じゃないぜ?

紅茶専門店で買った、いい紅茶を使ったミルクティーだ。」


そう大助が笑顔を見せて答える。


「へぇ。そいつは楽しみだ。」


そうミルクティー好きの幸壱は微笑む。



「ほぉ。誕生日の前日に旅館に泊まって、誕生日当日には安立あだちさんと2人でお祝いねぇ。そいつはいい誕生日になりそうだな。」


そう幸壱から話を聞いた大助が声を上げる。


「正しくは旅館みたいなコテージだけどな。」


そう幸壱が修正しゅうせいする。


「それはどう違うんだ?」


そう大助に聞かれて幸壱は考える。


「…分からん。」


そう幸壱は質問を投げ飛ばす。


「…さいかい。

でもまぁ登山始めて良かったな。」


「え?」


そう幸壱は聞き返す。


「安立さんとの思い出もそうだけど、お前が最近ネットに書いてるシリーズ物の小説。何て言ったけ?“登山殺人”シリーズだっけ?あれもなかなか人気らしいじゃないか。登山のシリーズ物なんて、それこそ登山を始めなかったら書こうとは思わなかっただろ?」


そう大助に言われて幸壱は「そうだな」と同意する。


「登山に誘ってくれた、安立さんに感謝しろよ~ぉ。」


そう大助がニコニコと笑顔を作って続ける。


「してるよ。」


そう幸壱は少し不機嫌そうに言葉を返す。



「おわぁ。このミルクティー美味しい。」


そう登華とうかが驚いた声を上げる。


「今日、大助のやつが誕生日プレゼントにくれたんだ。何でも紅茶専門店のミルクティーらしいぜ。」


そう幸壱も1口飲みながら説明する。


「本当に美味いな。」


そう幸壱も驚く。


「…誕生日プレゼントか。」


そう登華がマグカップに入ったミルクティーを見つめながら小さく呟く。


「ん?なんか言ったか?」


そう幸壱が目線を登華に向けて尋ねる。


「ううん。何でもない。」


そう登華は明るく微笑んで答えるとまたミルクティーを飲み始める。


そんな登華の姿を見つめながら幸壱は昼梟で大助に言われた言葉を思い出す。


{登山に誘ってくれた、安立さんに感謝しろよ~ぉ。}


「ありがとな、登華。」


そういきなりの感謝の言葉に登華は驚く。


「な、なによ。いきなり。」


「いや、何でもないよ。」


「嘘だ。何かある顔してるもん。」


「何かある顔ってどんな顔だよ。」


「こんな顔~。」


「なんだよ、その顔。」


そう言い合いながら2人は楽しそうに笑い合う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る