第4話「消えた朝と置き手紙」

朝、目が覚めると、彼女の姿がない。


部屋は静まり返り、ドアは少しだけ開け放たれている。慌てて周りを探してみたけど、どこにもいない。


「逃げたのか…」


そうつぶやいて、少しがっかりしている自分に気づいた。


昨夜、あの子は名前を教えてくれた。


あの小さな一言で、もう少し信じてもらえた気がしてたけど…やっぱり簡単にはいかないらしい。


ふとテーブルの上を見ると、そこには小さなメモが置かれていた。


「ごめん、ありがとうございました」


それだけが書かれたメモを手に取り、少し複雑な気持ちになった。


この街には、まなみのように行く場所を失った子がたくさんいる。


だからこそ、せめて一晩でも安心を感じられたなら、それでいいと思っていたのに、なぜか少し寂しい。


「まなみか…また会うことはあるのかな」


そうつぶやいて、私は仕事へ向かう準備を始めた。

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