第57話

その日の夜、寝る前にふたりでソファに並んでテレビを見て、23時のニュースが終わってから、「そろそろ寝るねー」と言ってソファを立とうとしたら、手を掴まれ、またソファに座ることになった。


そのまま、ぐいっと引き寄せられ、そっとキスをされた。

でも今度は昼間みたいにすぐには離してくれなくて、何度も向きを変えてキスをされ、そのうちどんどん激しくなってきて――


ソファに押し倒された。



「嫌なら言って。止めるなら今」


「嫌じゃない」


「好きだよ」



わたしも、って言おうとしたのに口をふさがれて言えなくなった。

だから代わりに叶和の背中に手を回した。


叶和はそっと、優しくふれてきた。


大切に大切に――




叶和がこんなふうにわたしにふれてきたのは初めてのことだったし、「愛してる」って言われて、泣いてしまった。


わたしもだよ。



朝目を覚ますと、ベッドの隣には叶和が眠っていた。

前髪が目にかかっていたから、手でかきあげたら、その手に叶和の指が絡んだ。



「起こした?」


「起きてた。沙也加の寝顔を見て、夢じゃないってわかったからもう一度目を閉じてた」


「それ……二度寝って言うんだよ?」


「もう少しこのまま。沙也加休みじゃん」


「その顔ずるい」



眠そうで目が細くなってるのに、笑ってるってわかる。

もう一度、叶和の胸に顔を埋め、背中に手をまわした。



「煽ってんの?」



叶和が耳元で囁いたから、顔を上げて睨みつけたら、キスを落とされて――

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