第46話 叶和 --side--

夜になって会社から帰宅した兄貴をつかまえて、瑤子さんに送ってもらった写真を見せた。



「これ、ニセモノ」



兄貴は写真を見るなり一笑した。



「本当に?」


「当たり前だろ? オレが不正とかそんなことするわけないじゃないか」


「証拠は?」


「証拠?」



兄貴は画像をじっと見ていたけれど、やがて画像を指差して言った。



「この取引項目、こんなのうちの会社にないから。そもそも今は全部電子取引になってるから、こんな紙の請求書なんて使ってないし。だから、サインはしないし、するにしても電子署名になってる」


「じゃあ、本当に違うんだ」


「違うよ。ばかばかしい」


「兄貴の上司に『依方』って男は?」


「『依方』はいるけど、男じゃない。女の上司だよ」


「そっか……」


「こんなもんがお前のとこに送られてきたの? 怖い世の中だな」


「だな」



オレが振り返って瑤子さんを見ると、瑤子さんは顔を真っ青にして、膝の上で両手を握りしめていた。

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