第44話 叶和 --side-- 叶和の過去
高校2年の夏休み。
友人たちとカラオケに行った帰り、みんなと別れてひとりになった途端、曲がるところを1本間違えて、知らない通りに出てしまった。
どっちに行けば大通りに出るのかとうろうろしていると、女が男に引っ張られるように歩いているのを見かけた。
それを見ているうちに、女の方は知っている人だと気が付いた。
同居している兄嫁の瑤子さん。
でも、オレが部活から一旦家に戻った時、母さんから瑤子さんは同級生と食事に出かけたと聞いた。
あれが同級生?
どう見ても年上にしか見えない。
不審に思い、2人の後をつけた。
やがて2人は、いわゆるそういうホテルの中に入って行った。
ホテルから離れ、どこをどう歩いたのかわからないくらいさ迷った。
心臓はずっとバクバクといってて、湧き上がる嫌悪感から、道の端に吐いた。
オレは何を見た?
瑤子さんが浮気?
あれは現実に起きていたことだった?
誰か別の人間を瑤子さんと見間違えたんじゃないのか?
そう、思いたかった……
瑤子さんの父親は市議会議員で、彼女は3人兄妹の末っ子。
父親の影響で、住んでいた街では顔も名前も知られているような人だった。
真面目で、おっとりとした遥子さんは、オレより7つ上の24歳だったけど、「世間知らずのお嬢様」という感じ。
だからこそ、そんな瑤子さんが兄貴を裏切るなんて信じられなかった。
家に帰ることができなくて、明け方になってそっと帰宅したオレは、自室に閉じこもって昼が来ても部屋から出なかった。
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