第42話

「眠いんじゃないの?」


「眠くない」



どうしてだか今日は駅まで見送りをすると言って、一緒にマンションを出た。


ケーキがそんなに嬉しかったのかなぁ?


そんなことを考えながら、あのゴミ捨て場の前を通った。

今日は金曜日だから資源ごみの日で、段ボールや缶が捨ててあった。



駅が見えて来た時、指先に叶和の手がふれた。

そのまま叶和が指を絡めてきたから、思わず叶和の顔を見上げた。

叶和は、真っ直ぐに前を向いていたけれど、わたしが見ているのに気がついたのか、こちらを向いて言った。



「今日は生きていた中で一番幸せな日」


「大げさ」


「行ってらっしゃい」


「行ってきます」



改札をぬけてしばらく歩いたところで振り返ると、叶和はまだそこにいて、さっきまで繋いでいた手を振ってくれた。

だからわたしも手を振り返した。


遠くからでも、叶和が笑っているのがわかった。



一緒に住んでいても、寝る時は別々だし、2人の間には何もない。

叶和の方から、手を繋いできたのは初めてで……

あのままずっと、手を繋いでいたかったな。


叶和は、今、何を考えているんだろう……

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