第41話

いつもより早起きして、叶和がお風呂に入っている間に、そっとテーブルの上にガドーショコラを置いた。


上手くできているかわからないけれど、こういうのは気持ちの問題だから!と、自分に言い聞かせる。


ケーキの隣にはリボンをかけた藻塩も置いた。




ふわぁっと、あくびをしながらリビングに入って来た叶和は、わたしを見て嬉しそうな顔をした。


寝起きのはずなのに、その顔、ずるいよ。



「早起きだね」


「今日は特別。次に会う時は日にちが変わってるでしょ?」


「うん。何かある?」


「2月14日だから!」


「塩!」


「塩もだけど、ケーキ作ったから、食べて」



叶和は黙ってテーブルの上のケーキを見つめた。



「もしかしてチョコ苦手だった?」


「好き」


「……朝からケーキはキツかった?」


「そうじゃない。嬉しすぎて。本当にすごく」


「良かった。喜んでくれて」



わたしがもしお母さんだったら許さないだろうなぁ。

朝ごはんがケーキだなんて。



叶和にあげたケーキをわたしも食べた。

悪くないと思うんだけど、どうなんだろう?


そう思って叶和を見たら、一口一口大事そうに食べてくれていた。


それを見るだけで、幸せな気持ちになったのに、時折お皿から顔を上げて叶和が笑みを見せるから、こっちまで顔がほころぶ。



何でもない日常は、当たり前のことなんかじゃないって知っている。

だから、お互いに笑い合える日々はとても大切。

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