第23話 日常

次の日の朝、仕事があるから早く起きてリビングに行くと、叶和はクッションにもたれるようにしてソファで眠っていた。


起こさないようにキッチンに行ったつもりだったのに、わたしが立てた小さな物音で叶和は目を覚ました。



「会社に行くから、合鍵置いておくね」


「ありがとう」



良かった。ちゃんと「ありがとう」という言葉だった。




出る準備をして玄関まで行ったところで、なぜだか叶和もついて来た。



「もしかして出かける?」


「ずっと休みをもらってるからオーナーに会ってくる。だから一緒に出る」


「うん。わかった」



叶和はわたしが適当に買った量販店のコートを着ていたけれど、叶和が着るとどこかのブランド品みたいに見える。



「なんでずっと見てんの?」


「ちょっと見とれてたんだよ。かっこいーなーと思って」


「……早く、行こう」



褒めたのに、叶和はぷいっと視線をそらすと、先に玄関を出てしまった。

追いかけるようにわたしも出て、駅に向かった。

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