第6話
ベランダへ続く窓のカーテンを少しだけ開けて外を見ると、街灯の明かりが照らす中をさっきよりもっとたくさんの雪が降っていた。
振り向くと、叶和はまだサンドイッチを食べていて……
パンの間に挟まれていたレタスを指先で摘んでいる!
「レタス出さないでちゃんと食べて」
叶和は左手に食べかけのサンドイッチを持ち、右手でレタスを摘んだまま、
わたしの方を見て固まった。
仕方なく、ティッシュの箱を持って近づくと、「あ」と言われたので、「あ?」とオウム返しすると、レタスを口に突っ込まれた。
「ちょっ――」
わたしにレタスを与えた叶和は、指についていたマヨネーズを舐めてこちらをじっと見続けている。
きれいな……顔、なんだよね。
つい見惚れてしまうような。
って――
「ストップっ!」
「何?」
「キ、キスしようとしないっ!」
「なんで?」
「な、なんで?」
「名前教えたし。あ……そっちの名前まだだからか。名前、何?」
「さ、沙也加」
「もういい?」
「違うっ!」
叶和は眉をひそめた。
なんでそうなるの?
キスを諦めたのかわからないけど、叶和は人差し指でわたしの唇をなぞった。
今……わたしの唇に触れたの、あんたがさっきマヨネーズついて舐めてた指だよね!
捨ててあった?場所に返してきたい……
でも、少しだけ開いているカーテンの隙間から見える外の景色は、どんどん白くなっている。
そんな中、もう一度あの場所へ放り出す勇気は持ち合わせていない。
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