幽霊の邂逅

沼津平成

幽霊の邂逅

 アパートにそろりそろりと、真夜中に出現いたします。私は幽霊でございます。


 女の幽霊ではありません、男の幽霊でもありません。オス、といったほうが正しいでしょうか……


 私は猫の幽霊でございます。三十年ほど前に、住民の一人が飼っていた猫でございます。


 私はその飼い主に渡されてから、何か落ち着かなくなって、ストレスが溜まったのか、数ヶ月後に息を引き取りました。


 そして、今は、大変についております。


 今の話を聞いて、あなたは何か不審な点を感じたかもしれません。


 それは、「なぜ猫が人間の言葉なのか」


 ええ、全動物は、死んでしまうと人間の言葉を喋るらしいのです。


 あるいは、全動物それぞれに合った言葉を喋れるのかもしれませんね。


 私はあなたが幽霊を信じないのを知っています。


 でも、ほら、こうして私があなたの枕元に立っているじゃないですか。


 だから——


 幽霊の存在を頭ごなしに否定するのを、どうかおやめください。


 おや? 時間が近づいてきたようです。


 もうすぐあなたも、私と同類です。


 やめろ、とあなたは言う! 私の人間についての学習能力は大変高いのです。


 私にも用があります。だから、


 もうそろそろ皮を剥いでもいいですか?


 あなたは特別な存在です。本当は、あなたを同類にしたくはないのですが……


 仕事なんだ、許しておくれ。


 ピュッ!


——ふっふっふ、また一人駆逐してしまったぜ。ああ、ご明察。俺はな、死神なんだよ!


                                    (完)

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