第14話最期の挨拶
14話目
これは私が1番可愛がっていた猫のみーちゃんのお話。
みーちゃんが亡くなった後、最期のお別れに来てくれたお話です。
それは夢の中。私はとある駅のホームにいました。
茶色い風景でホームにいる人もまばら。
そこは改札もなくてとても短いホームでした。
「駅…あ、電車来た」
走る音も止まる音もなにもしない、一両編成のとても小さな電車。
昭和の路面電車のように丸いフォルムをしたその乗り物に、乗る人と乗らない人がいたのを覚えています。
私はその電車に乗って、座席に腰掛ける。4人掛けの向かい合うボックス席でした。
ゆっくりと扉が閉まって、ゆっくりと動き出す。
ガタタン…と少し揺れながら動く車内はとても狭かったです。
母「旅の準備はできたのか?」
「うわ!?え、いつからいたの!?」
母「最初からいたでしょ。ミミは?」
ボーッと外を見ていれば向かいにいつの間にか母が座ってました。
突然声をかけられて驚いていればみーちゃんを呼んでいます。
「ミーはいないよ?」
母「いるよ、どこかに。」
「はぁ?《スタッ!!》おわ!!!」
何を言ってるんだよと言おうとすれば網棚から元気よく降りてくるみーちゃんが。
母がみーちゃんを呼びますが、みーちゃんはずっと私の足にスリスリして喉を鳴らしてくれてました。
「みーちゃん!みーちゃん、ここにいたの?帰ろう、みーちゃん」
そう言って抱きあげようとしたんです。
でもみーちゃんは私の手をすり抜けて電車の前の方へ歩いて行きました。
「みーちゃん、そっちじゃないよ。こっちだよ、そっちは行っちゃダメだよ!」
私は必死でした。みーちゃんが帰ってこなくなる。いってしまうと分かってしまって引き止めたんです。
でも母が私を止めました。
母「行かせてあげなくちゃダメだよ。あの子は最期に挨拶に来たんだから。」
そう言われ何も言えなくなって。
みーちゃんを見ればさっきまで振り返りもしなかったのにこっちを見て一言「にゃぁ」と鳴いて、強い光の中に歩いて行ったんです。
それを見届けて私はすぐに目が覚めました。
寂しいような嬉しいような。
あれはたぶん、お迎えの電車だったんだろうなぁと。乗る人は大人ばかりでしたし皆大荷物でした。
以上、これが14話目のお話です。
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