episode 4-3 苦笑とほくそ笑みの間
我が一組に次の授業の
「ううん……、何もするな、か」
うなりながら教科書や筆記用具を取り出した。向こうからの相談があったら顔を上げよう、彼女の悩みを聞いてきたのは僕だ――。
これこそがうぬぼれかもしれない。
授業で一番に指されたとき、僕は自分が告白に敗北したという事実を直視できていないのではないかと考えていた。質問には楽に答えられたが、頭が佳月に支配された僕はまたにらまれる始末。これじゃ告白直前か成功したばかりのどきどきな奴だよと不機嫌な先生の前で吹き出すところだった。
「まったく、修輔は意外と調子に乗っているようだが、次もうまくいくとは限らんぞー」
三組の直幸の「苦笑とほくそ笑みの間」という彼らしい表現がかっさいを呼んだ笑顔で小言を述べる晋太郎先生に、今日も教室中が反応に困って――、
ぶゅうあぁーうぅどかんがらがががっ!
「ひいっ」
風音と雷鳴、いっせいにぎゃっとなり騒ぎだす教室。窓の向こうは嵐の暗闇と化し、蒼い
「すげえ天気の変わりようだなあ、これは」
窓のそばに立って鼻息も荒い先生、最初に雷が鳴ったときの彼の驚き顔が一番笑えたらしいけど、僕は見逃してしまった。
雨と雷雲が去った夕方には空も明るくなり、僕は美羽が消えた道を一人で散策していた。パーぷルには会わない気がしたからだが、別に何かを検証をするつもりもなかったし、そもそもここに来たことに理由などない。ただ本当に歩きたかっただけ。そのまま彼女が最後に弘美と石投げして遊んだ河原まで歩き、石を拾いもせずに折り返した。
そして、半分まで戻ったところに三人連れでいたのが直幸である。
「あのさ、修輔はどうしてこの、『最後までパーぷルに会わないのは誰か対決』に参加したの? しなきゃいいのにって思うんだぞ?」
彼は他の二人から離れ、小柄な身体で質問しながら僕の隣に並んだ。
「それが藤也に無理矢理、金色の目のこと女の子にばらすって。聞いてなかった?」
「聞いてないよ。ふんっ、なるほど。修輔が勝手に告白して、うまくいっちゃったら対決の意味ないもんね」
直幸は吹き出すように話してくれる。そうか、藤也は僕に告白させないために強引に引き入れたんだ。気がつかなかった僕は彼の狙いに感心させられるけど、すでに僕は告白に失敗しているのだ。今日も佳月と話してあきらめるべき人間だとわかったところである。
もう、考えるのやめようよ。
部屋に戻った僕は小刻みに震える身体にささやく。この対決に勝っても告白はしないと決意を固めてもしっかり佳月のことを考えているではないか。
外はいつしか
「あーあ、これまで佳月のこと考えてたのは何だったんだ……」
僕は横になって天井を仰ぐ。本物の木かわからない、他の部屋を含めて怖くなる灰色の木目が嫌でも目に入った。さあ、あとはどうやって断ち切るかである。
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