第3話 騒がしい家族

ピピピ⋯⋯ピピピ⋯⋯ピピ

朝、目覚まし時計の音で起き、まだ6時半だということを確認した。


「よし、まだ寝れるな」


俺はそう思い、7時にまた目覚ましをセットし直して2度寝の体勢に入る。

そして、2度寝をする時特有の独特な幸福感に包まれながら意識を落と⋯⋯


「お兄ちゃん、おっきろー!」

「ゴフッ⋯⋯」


そう言って、2度寝をしようとしていた俺の腹に一切の躊躇もなく突っ込んできたのは、プラチナブロンドの髪の少女だった。


こと⋯⋯お前な、もう少し優しく起こせないのか?」


突っ込んできたのは俺の年子の妹、香澄詞葉かすみことはだ。

さっきも言ったが俺とは違って母さん似でプラチナブロンドの長髪に透き通るような水色の瞳を持った美少女だ。

学校では天崎涼葉と同じくらい人気がある。


「えへー、びっくりしたでしょ?ドッキリ大成功〜」

「びっくりしたというより痛かったわ⋯⋯」


そう言いながらベッドからおり、寝巻きから制服に着替えるためにクローゼットを開けた瞬間。


「わあ!」

「うおぉ!?」


クローゼットの中から急にこちらもプラチナブロンドの髪を持つ少年が飛び出してきた。


「えへへ、びっくりしましたか?」

「こっちはちゃんとびっくりしたわ⋯⋯というか2人して朝からドッキリを仕掛けてくんな!」

「「いやー、まさか全く同じ日にドッキリを仕掛けるとは、さすが双子と言ったところ」かな」ですかね」

「相変わらず息ぴったりだなぁおい!」


この軽くホラーなドッキリを仕掛けてきたのは詩葉の双子の弟の香澄詩葉かすみうたはだ。

容姿は詩葉の髪を短くして、ほんの少し男っぽさを加えたような、女性と見間違えてしまいそうになるような容姿をしている。

そのせいで詩葉という女性っぽい名前をつけられてしまい、それを本人は少し気にしているが。


「こらー!遊んでないで早く降りて来なさい、朝ごはん出来てるわよー!」

「「はーい!」」

「俺は遊んでたわけじゃねぇんだけど⋯⋯」


◆◆◆


リビングに行くと、父さんが食卓に座って、母さんが朝ごはんを並べていた。


「おはよー!」

「おはようございます」

「おはよ」


三者三様の朝の挨拶をしながら、全員席に着く。


「「「いただきます」」」


食事が始まり数分、母さんが口を開いた。


「3人とも、もう高校1年生だし、恋人はいなくても好きな人とかはいないの?」

「「「いない」」ですね」

「えぇー、全員いないの?」

「でもお兄ちゃんは告白されてるよねー?

それもとっても可愛い子に」

「ちょっ、詞⋯⋯」


詞葉の言葉に母さんが過剰に反応することは目に見えていたので、慌てて詞葉の口を塞ごうとしたが、時すでに遅し。

母さんの目がそれはもうキラキラしていた。


「へー!伊織が告白されてるなんて!その子はどんな子なの?」

「その子ね、めっちゃ可愛いしめっちゃいい子なんだよ!」

「お名前は?」

「天崎涼葉ちゃんって言うの!この子!」


そう言って、詞葉は母さんにスマホで天崎さんの写真をみせる。


「伊織、どうしてこんなに可愛い子の告白を断ってんのよ!伊織にはもったいないくらい可愛い子じゃない!」

「うるさいなぁ⋯⋯好きじゃない人と付き合うのは不誠実だからやめろって教えたのは母さんだろ?」

「そりゃそうだけど⋯⋯」


この後も、母さんからの質問と詞葉と詩葉、父さんの茶化しが続くのだった。


◆◆◆


「詩ー!もう行くよー!」

「今準備終わったのですぐ行きます!」


そうして、洗面所から黒い目を隠すくらい長い黒髪に大きいフレームの眼鏡をかけた地味な少年がでてきた。


「詩、まだその変装しないと学校に行きたくない?」


そう、その地味な少年は詩葉だった。

少し長めのプラチナブロンドの髪を隠すように更に長い黒髪のウィッグを着け、大きく鮮やかな水色の瞳を黒色のカラーコンタクトで隠してさらに大きな眼鏡をかけることで素の詩葉とはかけ離れた地味な少年が出来上がっている。


「はい、まだちょっと⋯⋯怖いです」


詩葉がこの変装をするようになったのは、小学生の時に学校で色々あったせいだ。

何があったのかというと⋯⋯


「お兄ちゃん、もうそろ学校行かないと遅刻しちゃうよ!」

「あ、すまんすぐ行く」

「変装した僕もなかなかイケメンでしょー?」

「はいはい可愛い可愛い」

「僕に可愛いって言うのやめてくれってずっと言ってるじゃないですか!?」

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