第三章「機能不全家族に生まれた私より」
機能不全家族というのは、一言で説明すると、言葉通りに家族として機能していない事を指す。細かく言うと、家庭内の対人関係やコミュニケーションが正常に機能しておらず、子育てや団欒、地域との関わりなどの機能が失われている家族を指す。また、家族崩壊や家庭崩壊とも呼ばれている。この家族の特徴は、「家族間で健康的な関係を築くことが困難である」「家庭内のコミュニケーションが悪く、支援や安心感が欠けている」「保護者から子供への虐待やネグレクト(育児放棄)などがある」「子供に対する過剰な期待がある」「ギャンブルや家庭不和などがある」「親が家庭に無関心/過干渉である」「公的な役割意識が欠如している」などの特徴が含まれている。
私の場合は、「親父が家事などの手伝いを一切して来なかった事」「両親が不仲である事」「離婚と再婚を何度も繰り返していた事」「私の戸籍が何度も行ったり来たりした事」「心理虐待が常日頃からあった事」「共依存状態である事」「貧乏だった事」「両親が共に派遣やバイトの非正規雇用である事」が挙げられる。
この状態でも尚、この家族は【普通の家族】として見て来たので、暴力や暴言が私に向けていないだけまだマシだと思っている。夫婦の喧嘩なんて、どの家庭にも絶対あるし、やはり他人同士だから食い違う事も多いだろうし、人によっては短期だったりするだろう。これを当たり前の光景だと受け入れていた。けれど、心理医学的にはこれを「異常な家庭」だと定義し、わざとで無くても、私の目の前や近くで喧嘩をする行為は「心理的虐待」と看做すらしい。ネグレクトなどをされていないだけマシであって、少し変わった家族だという事だけ。世間がこれを【異常】と捉えたとしても、見捨てずに育てた両親は、そこら辺にいるあるあるな最低な親よりマシだ。正直、この事を伝えた人達から「機能不全家族だね。」と言われた時は、両親が離婚した今でも、複雑な気持ちを抱えて過ごしている。
私の両親が正式に離婚したのは、去年の二千二十三年の夏。別居生活を始めたのは去年の九月からなので、まだ離婚してから日は浅い。だからか、離婚しても、偶に用があって会う機会がある。私は特に、何ヶ月か一度のドライブを親父としているので、離婚して別居したという実感は湧いていない。
両親が離婚した理由は、ほとんど親父が原因である。言い難いが、令和のこの時代には通じない人であり、両親は当然ながら昭和の人間なので、時が進んでいたとしても、平成で未だに止まっていると思われる。
親父といると楽しいと思える反面、七割くらいはストレスが溜まるのがオチだ。基本的に自分の話しかしないし、すぐ拗ねる傾向もあり、更には貧乏性で物が増えてしまうのである。そして、怒らせると物を壊そうとしたり、相手が人であるならば喧嘩を買ってしまったり、何より親父には前科があるくらい、本来は一緒に居てはいけない危険な人物である。私は、家族として見ている時、親父も何かの精神疾患を抱えているのでは無いかと思っていた。否、そもそも、この家族全員おかしい部分しか持ち合わせていなかった。親戚ですら、少し疑ってしまうような性格の人も少なからずいるし、薬のせいで亡くなってしまったが、その人も私と同様自閉を持っていたようで、しかし、彼はかなり重度の自閉症だったそうだ。喋るのも幼く、けれど皆に愛されていた。親父も彼が優しい性格であり素直で、何でも頷いてしまい断れない人柄だった事を知っていた。止められなかったが、最初に記載した通り、彼は薬が原因でこの世を去ってしまった。私が、年少か年中くらいに亡くなった親父の母親と同じ墓のところに名前が載っている。ここでは祖母と呼ばさせていただくが、祖母はよくりんごを出してくれて、そのりんごが程よく甘く美味しかったのを覚えている。親父と似て性格は優しく、しかし、少々頑固な一面もあり、親父も母親も理解に苦しんだと言う。そんな祖母は、二度も入院しているのだが、私が唯一覚えていてショックだったのは、確か、家族で買い物に行った時だった。買い物が終わった次の瞬間、祖母は突然、車の中で尿を漏らしてしまった。それから少しぐったりした祖母を一度家に連れて帰り、その後、「呼ぶな」と言われても逆らって親が救急車を呼んだのを覚えている。その頃だったか、あまり記憶が無いのだが、症状が悪化して亡くなってしまった。少し混ざってしまうのだが、母親の方の祖母も、親父の方の祖母と似ていて心配性だったりしたような気がする。歳の所為もあっただろうが、けれど、幼い私を大事に育ててくれたのは間違いない。
両親みたく、周りのように私には本当の兄弟や姉妹が居ないが、幼い時の私が母親に言った言葉は「わたし一人でいいからね。弟とか妹いらないよ。」と、普通ならそのくらいの歳の子ならば兄弟や姉妹が欲しいと口にするものなのだが、私は真っ向から否定したらしい。きっと、母親が辛そうにしんどそうにする姿を見たくなかったのと、単純に、今の私の見解では、兄弟や姉妹がいたところであまり得はしないと感じたのかも知れない。
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