第一章-2「世界は鬱くしい」
幼少期の記憶は、私が幼稚園の帰りのバスで見た悲惨な事故の記憶しか残っていない。あれは、大人になった今でも衝撃的な光景だった。母親も、当時は危険を感じて、ドアを無理矢理開けて転げ落ちた。私の幼馴染であるその子の母親の車と相手の車は大破し、加害者側の頭からは酷く出血している状態だった。当然ながら、幼稚園のバスを運転していた人は、その場にいた全員に「大丈夫ですか!」と声をかけて、様子を見にバスから降りた。そして、保育士さんも慌てた様子で降りて行って、私は確か、冷静ながら母親の元へ行って、大丈夫かどうかを確認したと思う。幸い、母親は腕の擦り傷で済んだのだが、加害者側の怪我が酷く、血も止まる気配が無い。確か、もう既に救急車はいたと思う。母親と幼馴染の子の母親も、念の為、救急車の中で怪我をしていないかなどの確認で診てもらったようだ。私は基本、こういう悲惨な光景を目撃しても泣かなかったそう。あまりにも脳内は冷静すぎるのだと思う。昔から、私は助手席に乗る事が多いので、少々痛そうに運転をする母親の様子は見ていられなかったが、そんな事よりも、車がお互いに大破してしまったあの二人が心配だった。ちなみに、大人になった今でもどうしているかが気になっている。
道は広い方で、運転手は比較的運転しやすい道だと思うが、何せよ、カーブだったり、下りや坂が多い場所だったので、もしかしたら、スピードを緩めずに起きてしまった事故だと思われる。
頭から出血していたそのおじさんは、頭を酷く打ったせいでぼんやりしていたと思う。それから、服装と髪型は、今でも気になっている事があった。
言い方が悪いのだが、身だしなみは少々悪く、家もそんなに綺麗では無いのではないかと思われる。ゴミ屋敷とまではいかないとしても、何の仕事をしているのかわからない。または、働いていなかったのかも知れない。どちらにせよ、当時で既に中年くらいの男性である事は間違いなかった。
幼馴染と言ったが、彼女とは一緒に遊んだ事は一度も無い。私は、男子と遊ぶのに夢中だったので、女子がよくやるおままごととかには参加しなかった。
ただ、私の母親とその母親がとても仲が良く、何故か、彼女はいつも感情が無いのである。後に知ったのは、母親もまたうつ病であったこと。けれど、彼女は悪い人では無い。たまに声をかけてくれる優しい一面を持っている。そして、兄弟もいて遺伝なのか頭が良い。笑顔はほとんど見せないが、中学に入った頃はかなり笑顔が目立つようになって、私は何故か嬉しかった。
彼女とは、中学までの幼馴染である。
その母親も、本当に優しい人でよく出来た親だ。
きっと、彼女は親が心配になり、また、歳の離れた兄弟も家から育ってしまったので、自分がしっかりしなきゃと、心のどこかで思っていたに違いない。
彼女は、笑えば本当に可愛いのだ。
私が、中学時代、精神と自尊心がかなり低下していた頃に、小学時代のメンツが、いつも声をかけてくれていた。彼女らに、果たして反抗期はあったのだろうかというくらい純粋無垢なメンツだった。この当時は、私の学年でカースト制度が流行り始めた頃だったので、それでも彼女らは上の方だったのだろう。けど、差別やいじめをせず、昔と変わらない接し方でいてくれたのには、今でも感謝している。
そして、彼女と親しい仲になったメンツにも、彼女を笑わせてくれて有難うと言いたかったが、他人の私がそんな事を言えるはずも無く、中学校生活を終えた。
もう一度言うが、彼女はそれなりに勉強が出来るので、町の高校では無く、それこそ少し偏差値が高めのところに通ったに違いない。大学も行っているだろう。
自分よりも他人。
本来は、他人よりも自分なのに、何故その優先順位の癖が抜けないのだろう。
他人の考えや性格は変えられないけど、自分は変えられるというのに、結局、いくら矯正したって、気づけば元に戻っている。
こんな比較をしたって仕方がないのに、私は何故こんなにも出来損ないなのだろうと、毎日思っている。
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