悪夢-EP2
私は、幼少期から自分の部屋を持った事が無かった。
少し広いアパート暮らしだったとしても、必ず父親にその一室が取られてしまっていた。
当然、一軒家のように逃げ場は無く、両親の喧嘩や怒声、食器や飾り物などの大事な私物が割れたりする音や、借りている部屋なのにも関わらず、床には必ずと言っていいほど傷が残ったり、クローゼットの扉に穴が空いたり、私は耳を塞いでも、今もこうしてイヤホンで曲を垂れ流しているが、大音量にしても声が聞こえたり、翌日には苦情の手紙が入っていたり、これらが、両親が正式に離婚するまで日常茶飯事だった。
その日から私は、二人が結婚した理由を一生懸命考察していた。また、結婚というものは地獄の始まりに過ぎないと思い込むようになった。
実の父親に対して、「パパ」と何故か言いづらく「親父」と呼ぶようにした。
私が大人になってから知ったのだが、父親は、何度も何度もやらかしており、そして、本当の前科も持っている。
幼少期の時に、複雑骨折をしていなければ、もし、お酒が強かったら、今よりももっと最悪な事態を巻き起こしていたのかも知れないくらい、父親は短気な部分があった。
母親も、当時はとても情緒不安定であり、顔色を伺わなければ、私がいつ怒鳴られるかわからない状況でもあった。
そう、私は昔から居場所がどこにも存在していなかったのである。
手を出されてはいないものの、これが虐待になるという事を知ったのは、私が中学二年生の、とある夜の話である。
私は、学校も家も居場所が無かったので、裸足で家を飛び出し、出来るだけ遠くへ逃げようとした。
しかし、当時は夜が怖くて苦手だった。
学校の最寄駅まで歩き、一晩そこで過ごそうと決意したのと同時に、死んでしまおうとも思っていた。
だが、パトカーが私の目の前に止まり、車内で事情を説明しなければならない状況になってしまったのである。
なのに、警察はその時点で私を保護せずに家に帰した。
あの日から、警察の信頼は薄い。
帰宅後、両親から何故か怒られた後、二人して「虐待は何でもかんでも言い過ぎだ。」「自分達は何もしていない。」と、強く否定していたのだから。
きっと、その時くらいからだろう。
私は、更に人間不信となり、感覚は麻痺していくばかりで、精神も徐々に崩壊していったのである。
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