第二章: 古代の力
リヴィアとマルクス、そしてアエリウスの三人は、ローマの夜の闇に紛れて歩いていた。
彼らの目的地は、ローマの地下深くに眠ると言われている「古代の剣」が封印された神殿だ。
この剣は、ローマ帝国の歴史において伝説となっているが、その実在を知る者は少ない。
セクストゥスがその力を狙っているという情報を受け、彼らは先に剣を見つけ出すための危険な旅に出た。
アエリウスは古代の剣について、そしてその神殿についての詳細をリヴィアに語り始めた。
「この剣は、ローマの初代皇帝がその支配を盤石にするために造られたと言われている。だが、その力はあまりにも強大で、皇帝は剣を封印することを決断した。神殿は古代の知識を持つ者たちによって建設され、複雑な仕掛けと強力な魔法によって守られている。剣に触れられる者は限られており、封印を解くためには特定の血統が必要とされる」
リヴィアは眉をひそめた。「特定の血統?それがどうして私たちに関係するんだ?」
アエリウスはリヴィアを見据え、少しためらいながらも続けた。「お前の家系だ、リヴィア。お前の父親の血筋は、古代の皇帝に連なるものだ。だからこそ、セクストゥスはお前の家族を標的にした。お前だけが剣の封印を解く鍵を持っている。そして、それこそがお前が狙われ続けてきた理由だ」
リヴィアはその言葉を聞いて愕然とした。
家族を陥れた陰謀の背後には、そんな秘密が隠されていたのだ。
父がなぜ反逆者として追われたのか、母や兄弟が奴隷にされた理由が今ようやく繋がった。
「つまり、私が剣に近づくことで、セクストゥスの計画が完成してしまうかもしれないということか?」
アエリウスは頷いた。「だが、だからこそ、先に剣を手に入れる必要がある。セクストゥスがその力を使う前に、我々がそれを封印するか、もしくは破壊しなければならない」
三人は夜の闇の中を進み、ローマ市街を抜け、地下神殿へと続く秘密の入口にたどり着いた。
それは古代の下水道を通じて隠された通路であり、誰にも知られることなく神殿へと入るための唯一の道だった。
アエリウスは、かつての剣闘士仲間や秘密結社の情報網を駆使し、この通路の存在を知っていた。
入口は古代の石扉に覆われており、長い間誰の手も触れていないようだった。
アエリウスが慎重に仕掛けを解除すると、石扉が重々しく開き、冷たい空気が流れ込んできた。そこから続く階段は深く暗い。
古代の力が眠っていることを感じさせる、異様な静けさが周囲を包んでいた。
「ここからが本当の試練だ」とアエリウスは低く呟いた。「神殿には数多くの罠と魔法が仕掛けられている。俺たちは慎重に進まなければならない。特にお前だ、リヴィア。お前はその血統のため、神殿が反応する可能性がある」
リヴィアは不安を感じながらも、覚悟を決めて階段を下り始めた。
彼女の後ろにはマルクスが剣を握りしめ、アエリウスが灯した松明が薄暗い道を照らしていた。
地下深く進むにつれ、周囲の空気がますます重くなっていった。
古代の壁画や彫刻が神殿の内部を飾っており、その中には、戦いの神や、かつて剣を手にした英雄たちの姿が描かれていた。
リヴィアはこれらの絵に見覚えがあった。幼い頃、父が語ってくれた古代ローマの伝説の数々だ。
「これは…」リヴィアが立ち止まり、ある一つの壁画を指差した。「この剣は、まさに私たちが探しているものだわ」
壁画には、伝説的な剣が描かれていた。剣は光を放ち、周囲には雷や炎、風が吹き荒れる様子が描かれていた。
それは単なる武器ではなく、神々の力を宿した究極の存在であることを示していた。
「そうだ。これが『古代の剣』だ」とアエリウスが答えた。「だが、この剣には代償が伴う。使い方を誤れば、その者自身をも滅ぼしかねない強大な力だ」
さらに奥へと進むと、広大な中央のホールが現れた。
その中心には、石の台座の上に置かれた一本の剣が輝いていた。
剣はまるで呼吸をしているかのように微かに光り、周囲の空気を揺らしていた。
リヴィアはその場に立ち尽くし、剣に引き寄せられるように一歩一歩近づいていった。
彼女の手が剣に触れようとしたその瞬間、強烈な閃光がホール全体を包み込んだ。
「リヴィア、気をつけろ!」マルクスが叫んだ。
だが、遅かった。リヴィアが剣に触れた瞬間、古代の力が目覚め、神殿全体が震動を始めた。
彼女の周りにはエネルギーが渦巻き、台座に刻まれた古代の文字が光を放ち始めた。
「これが…古代の力…」リヴィアは息を呑んだ。
剣はリヴィアを選び、彼女の体内に力が流れ込んでいくのを感じた。
だが、その力はあまりにも強大で、リヴィアの意識が奪われそうになる。
彼女はその場に膝をつき、必死に自分を保とうとした。
「リヴィア、しっかりしろ!」マルクスが駆け寄り、彼女を支えた。
アエリウスはその様子を冷静に見つめ、「リヴィア、剣の力を受け入れろ。それができなければ、お前自身が剣に飲み込まれてしまう」と警告した。
リヴィアは目を閉じ、深呼吸をして心を集中させた。
彼女は剣と一体化し、その力を自分のものにするために意志を強く持った。
やがて、渦巻いていたエネルギーが次第に静まり、リヴィアの体に馴染んでいくのを感じた。
「やった…」リヴィアは汗を拭い、剣をしっかりと握りしめた。「これで私たちは…セクストゥスと対峙できる」
だが、彼女の胸中には不安が残っていた。
この剣の力が本当に自分の思い通りに操れるのか、そしてその代償が何であるのか、まだ何も分かっていなかった。
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