第三章: 影の覚醒
深夜の空は雲に覆われ、星の光さえ届かない暗闇がリヴィアたちの前を支配していた。
彼女が「古代の剣」を手にしたことで、状況は一変したが、その代償を知る者は誰もいなかった。
だが、彼らの旅路はまだ終わっていない。
次の目的地、アレクサンドリアへの旅の途中で、影の力が彼らを待ち受けていた。
リヴィア、マルクス、そしてアエリウスは、長い船旅の末、エジプトの港町に到着した。
彼らが求める次なる手がかりは、古代の秘密を記した「闇の書」。
それは、セクストゥスが狙っている強大な力に対抗するためのものであり、影の力と呼ばれるものが封じ込められているとされている。
船が港に着くや否や、リヴィアは不安を感じた。
まるで何かが彼女を見ているかのような、冷たい視線が背後から感じられる。
彼女が振り返ると、そこには誰もいない。しかし、その気配は確かに存在していた。
「何かがおかしい…」リヴィアは小声で呟いた。
アエリウスはその言葉に反応し、すぐに周囲を警戒し始めた。「我々を狙っている者がいる。奴らはすでに我々の動きを掴んでいるのかもしれん」
マルクスは剣を抜き、「リヴィア、準備はできているか?いつでも戦えるようにしておけ」と忠告した。
彼らはエジプトの砂漠を進み、アレクサンドリアの外れにある廃墟に向かう。
そこに「闇の書」が封印されているという伝承があった。
しかし、廃墟に近づくにつれ、リヴィアの不安はますます強まっていった。
彼女の手に握られた古代の剣が、微かに振動し始めたのだ。
「これは…」リヴィアは驚きの声をあげた。「剣が反応している…」
アエリウスは鋭い目でリヴィアを見つめ、「影の力だ。奴らが近い」と言った。
そして、その瞬間、廃墟の中から異様な闇が立ち上がり、形を持ち始めた。
それは人影のように見えたが、目は光を失い、存在自体が異質だった。
まるで生と死の狭間から現れたかのような、その影の存在が、リヴィアたちの前に立ちはだかった。
「セクストゥスか…?」マルクスは剣を構えたまま尋ねたが、アエリウスは首を振った。
「いや、これは奴とは違う。だが、この影はセクストゥスが操る力の一部だ。気をつけろ、影の力はその者の心の弱さに付け入る」
影の存在は言葉を発さず、その代わりにリヴィアたちに向かって一気に襲いかかった。
リヴィアは即座に剣を抜き、古代の力を解放しようとしたが、影の存在は予想以上に速く、彼女の動きを封じ込めようとするかのように接近してきた。
「リヴィア、影に飲み込まれるな!」アエリウスの声が響いた。
影の存在がリヴィアを取り囲んだ瞬間、彼女の心に不安と恐怖が渦巻き始めた。
まるで彼女自身の影が具現化したかのような感覚に襲われ、過去の罪悪感や弱さが次々と浮かび上がってくる。
影はその心の隙間に忍び込んで、彼女を支配しようとしていた。
「これは…私の…心の影?」リヴィアは苦しげに呻いた。
影の存在は彼女の過去の傷を具現化し、精神的に追い詰めていく。
リヴィアは自分自身の心の中で、影との戦いを強いられた。
「私には…力がある。父が…兄弟が…皆私を頼ってくれた…でも私は何もできなかった…」
彼女の中で、無力感が再び広がり、影がますます強くなっていく。
だが、その時、リヴィアの手にある剣が再び光を放ち始めた。
それは、彼女の心の中に眠る強さを呼び覚ますためのものだった。
「違う…私は無力じゃない…!」リヴィアは声を上げた。「私は強くなるためにここにいる!私は戦う!」
その瞬間、古代の剣が強烈な光を放ち、影の存在を一気に弾き飛ばした。影は叫び声を上げながら消え去り、周囲には再び静寂が戻った。
リヴィアは息を切らしながら、その場に膝をつき、剣を握りしめた。「私の…影が…あいつだったのか」
アエリウスはゆっくりと彼女に近づき、肩に手を置いた。「影の力は誰もが持っている。特に強い意志を持つ者ほど、その影は深く、強大だ。だが、お前はそれを克服した。お前の力を認めているのは剣だけではない。自分自身だ」
マルクスも静かに頷き、「リヴィア、君は本当に強くなった。影に屈しなかったのは、その証拠だ」と言った。
だが、彼らが勝利を喜ぶ間もなく、廃墟の奥から再び闇が立ち上がった。
それは先ほどの影よりもさらに強大で、恐るべき力を放っていた。
そして、その闇の中から姿を現したのは、セクストゥス自身だった。
「よくぞここまで来たな、リヴィア」セクストゥスは冷笑を浮かべた。「だが、お前の力はまだ未熟だ。私には敵わない」
リヴィアは剣を握りしめ、セクストゥスに向かって構えた。「もう逃げない。私はお前を倒し、この影の力を終わらせる」
セクストゥスは不敵に笑い、「そうか、それなら見せてもらおう。お前の『覚醒』した力をな」と言い放ち、闇の力を解き放った。
こうして、リヴィアたちは新たな闘いの幕を開けることになった。
影の覚醒は、リヴィアの心の試練の始まりに過ぎなかった。
セクストゥスとの決戦は、彼女が古代の剣と自分自身の力を完全に覚醒させるための最終局面となるだろう。
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