第26話・退院?


「はい、じゃあ包帯取りますねー」


「怖かったら向こう向いてていいッスよー」


シーマさんが入院した翌日―――

ボクたちは彼女の入院部屋で、経過を見守る

事に。


しかしその結果はすでにわかっていた。


なぜなら、ボクのステータス画面に、




――――――――――――――――――――――


病院管理者:ミルトレッド

転生前:安藤あんどう蜜弥みつや


レベル:17


・現在のスキルptポイントは55,810ptです。


・現在の病院内滞在者:5名


・『治療』が発動しました。


シーマを『治療』しました。


『治療』は病院内で一泊すると、自動的に

処置されます。


『治療』は状態異常に適用されます。

また、これによるスキルptの減少は

ありません。


滞在者pt:1日/2,330pt



――――――――――――――――――――――




と、シーマさんを『治療』したと

表示されていて、


レベルやスキルptも若干UPしていた。




「……えっ?」


シーマさんは自分の足を見て―――

きょとんとする。


「あれ? え? ワ、ワタシ……

 確か右足をアーマークロー・リザードに

 やられて、足首から千切れかけていて、


 な、何で?

 どうしてですの?

 き、綺麗にくっついているですの!!」


赤い短髪をしたお姉さんは、信じられない

といった表情で、ボクたちと自分の足の

間を、視線を行ったり来たりさせる。


「これがみっちゃんの能力だよ」


「みっちゃん?


 ええと、あの―――

 この子ってアンディちゃんですよね?


 目と髪の色が全然違いますけど」


「あっ」


そこでボクを始め、みんなもハッとした

表情になる。


そうだった。

昨晩、お風呂に入る時にブロンドに

染めた髪と、ブルーのカラーコンタクトは

元に戻していたんだっけ。


「え、えっとそれは―――

 でもよくボクだって気付きましたね?」


「こんな美少年が、そうそういるとは

 思えませんですの~!」


そうシーマさんが言うのを、ボクは顔を

赤らめながら聞いて……

他のお姉ちゃんたちはウンウンとうなずく。


「まー、それよりメシにするッス!」


「積もる話もあるのである。

 下のレストランで続きはするのである」


「もうご自分の足で立てるはずですわ~」


お姉ちゃんたちの言葉に、シーマさんは

ベッドから身を起こすと―――


「た、立てますですの……


 もう一生、歩けない事も覚悟していた

 ですの……


 感謝しても、し切れないですの……!!」


そこでシーマさんは泣きだしてしまい―――

みんなでなだめるのに時間がかかり、

レストランまで行くのが少し遅くなった。




「んむむむむむ~……!


 お、おいしいですの!

 貴族の依頼を以前受けた事があります

 けど、そこで出された料理より何倍も

 美味ですの!!」


そう言ってシーマさんは、カツ丼と

かき揚げソバを頬張ほおばる。


「あの、それで―――

 ボクのこの能力についてですけど」


食事中にこれまでの経緯はだいたい話した。

ボクがおずおずとそれを確認すると、


「うん、まあ……

 説明は理解したですの。


 でもちょっと情報量が多過ぎるですの」


そこで彼女は食べる手をいったん止めて、


「ええと―――

 みっちゃんを含め、そこにいる5人が

 異世界からの生まれ変わり?

 でこちらの世界へ来た事、


 この建物はみっちゃんの能力で出来た、

 病人やケガ人を治せる施設である事、


 しかも1日あればどんな状態でも、

 『治療』出来てしまう事……


 そしてギルドに依頼が来ている、あの

 領主様への献上品けんじょうひんがみっちゃんである事。


 これは確かに、おおやけには出来ないですの」


その言葉にお姉ちゃんたちもうなずき、


「まぁなんだ。

 それで、あと半月くらいはこの病院に

 いてもらうよ」


「あんな大ケガが1日で治ったなんて

 知られたら、大騒ぎになるッスからねえ」


あおいお姉ちゃんと加奈お姉ちゃんが

まず今後の事を語り、


「それはいいですの。

 でも、『レッド・バタフライ』の

 メンバーには伝えておきたいですの。


 あの子たちも心配していると思うですの」


シーマさんはリーダーとして、まず

メンバーを気遣う。


「そうであるな。

 まあ、あと数日したら加奈マイヤにでも

 行ってもらえばいいのである」


「それじゃあ、そろそろデザートに

 しますわ~。

 何がいいですか~?」


理奈お姉ちゃんと詩音お姉ちゃんの言葉に、


「お任せしますですの!!」


と、彼女は元気よく答え―――

そしてみんなで笑い合った。


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