第27話・ストレス


「もうガマン出来ませんのー!!

 早くここから出して欲しいですのー!!」


あれから数日経過し、シーマさんも

病院の生活に慣れて来たと思って

きた頃―――


なんでか彼女が急に怒鳴り始めた。


「ちょっ、か、患者さん落ち着いて!」


「何があったッスかー!?」


慌ててあおいお姉ちゃんと加奈お姉ちゃんが

駆けて来て、


「どうしたのであるか!?」


「ち、鎮静剤は必要ですか~!?」


続けて理奈お姉ちゃん、詩音お姉ちゃんの

2人も走って来て、


「シーマさん、落ち着いてください!!」


ボクがそう言って手を握ると、


「うびゃんっ!?」


奇妙な叫び声をあげ、そのまま数歩下がって

自分のベッドに尻もちをついた




「あの、それでどうしたんだ?

 ココそんなに嫌だったのか?」


売店から飲み物を持って来て、みんなで

一服すると、ようやくシーマさんは

大人しくなり、


「患者さんのストレスになるようなものが

 あるとは思えないッスけど~……」


「僕たちに取っては馴染みがある物だから、

 そう思えるだけかも知れないのである」


「ナースとして対応するから、何でも

 言ってみてちょうだい~」


葵お姉ちゃんに続き、他のみんなも

シーマさんに聞いてみると―――


「いえ、この生活は天国過ぎて……

 別にそれ自体に不満はないのです。


 食事オイシイ、お菓子オイシイ。

 お酒も言う事ナシ。

 お風呂もトイレも何もかも」


じゃあ何が原因なんだろう、とボクが

首を傾げていると、


「あ、あの~……

 言ってもいいですの?」


赤い短髪のお姉さんは、申し訳なさそうな

態度で上目遣いに話す。


「ああ。

 正直アタシらもみっちゃんも、別世界の

 人間だから、気付かない事があるのかも

 知れない。


 今後、他の患者さんを入院させる機会も

 出て来るだろうし―――

 何でも言って欲しい」


ワンレンロングの金髪をかきあげて、

葵お姉ちゃんが促すと、


「ふ、不満は……」


おずおずと口を開けるシーマさんに、


「不満は?」


「何なのであるか?」


「ぜひ聞きたいですわ~……!」


ブラウンのツインテールに、

茶髪ロングストレート、

銀髪ロングのお姉ちゃんたちがお互いに

顔を密着させるように聞き返すと、


「不満は―――


 ワ、ワタシ以外の全員ですの!!」


「ほへ?」


思わずボクがきょとんと声を上げると、


「だってそうですの!!


 あなたたちがあちこちでさかって……!

 いろいろやっている事が問題ですの!!」


そ、それってアレの事!?

え!? もしかして見られていたの!?


「ま、待って!

 アレ見られていたのか!?」


「そんな事は無いッス!!

 戸締りはしっかりしていたはずッス!!」


「なるべく声も出さないように

 シていたのである!!」


「ヤッた後も、診察をする時などは

 顔に出して無かったと思いますわ~!!」


お姉ちゃんたちも困惑しながら焦りまくる。


「それでもわかるんですのよー!!


 匂いで!! 雰囲気で!!

 幸せ全開なオーラで!!


 ワタシだけ生殺しですのー!!」


再び爆発するシーマさんを、ボクたちは

全員でなだめ始めた。


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