第24話・緊急依頼


「師匠?」


ボクの言葉を聞いたカミュギルド長が

聞き返す。


するとお姉ちゃんたちはアイコンタクトで

『わかった』と言うようにうなずいて

くれて、


「確かに、アンディの師匠なら―――

 何とかしてくれるかも知れない。


 今アタシらがやった手当も、その人に

 教えてもらったものなんだ」


あおいお姉ちゃんがアゴに手をあてて

そう話すと、


「そうッスね、あの人なら」


「断定は出来ないが……

 可能性はあるのである」


「診てもらう価値はあると思いますわ~」


続けての、加奈・理奈・詩音お姉ちゃんの

言葉に、周囲の人たちは色めき立ち、


「ほ、本当か!?」


「ああ。だけどあの人ちょっと性格が

 キツいっつーかヘンクツ?

 っていうか……


 ただ騒がれたり目立つ事を嫌う人なんだ」


それを聞いたギルド長は両腕を組んで、


「お前さんたちを仲介すれば、

 大丈夫なんだな?」


「ああ。

 この子の護衛を務めた事もあるし、

 アタシら『クイーン・ビー』が頼めば、

 断られる事は無いと思う」


そこで金髪のウェービーヘアーをした

彼女は、大きく息を吐くと、


「わかった。


 これはランストの街ギルドからの

 緊急依頼とする。

 『レッド・バタフライ』リーダー、

 シーマをその人に診せてやってくれ」


「了解!


 詩音レイラ、シーマを背負ってくれ。

 加奈マイヤは一足先に、飛走フロート・ラン

 あの人に伝えに行け。


 じゃあ行くよ、理奈エヴァ、アンディ」


こうしてボクたちは冒険者ギルドから、

トンボ返りするように退出した。




「うぅっ、ここは……?」


夜半、短い赤髪のお姉さん―――

『レッド・バタフライ』リーダーの

意識が戻った。


街からあの病院までは片道3日ほど

かかるので、どうしても途中野宿が

必要となるのだけど、


病院から持ち出したシーツと布団ばさみを

うまく使って、木々の間に簡易テントの

ようなものを作っていて……


その中で目を覚ましたシーマさんは、

初めて見る光景に困惑しているようだった。


「お目覚めですか?」


「はぇえっ!?

 え? 誰? アンディちゃん?」


まだ意識が朦朧もうろうとしているのか、

ボクの事がわからないようだ。

そこへ葵お姉ちゃんが、


「おー、気付いたか。

 今な、お前がやらかした後始末のために、

 アンタを搬送はんそうしているんだよ」


「アーマークロー・リザードにいどむなど、

 10年早いのである」


「無茶し過ぎですわ~」


お姉ちゃんたちの言葉に―――

シーマさんはハッとなって上半身を起こし、

自分の右足を見る。


「……そ、そうだったんですの。


 すいません、迷惑をかけてしまって。

 やっぱりその、足―――」


最悪の想定をしたのか、彼女は目を伏せる。


「大丈夫! 治ります!!

 あそこまでたどり着けば必ず……!」


ボクはシーマさんを元気付けようと、

両手をしっかりと握る。


「はひっ!?」


妙な声を上げる彼女に、葵お姉ちゃんが

割って入って、


「アンディちゃん、そりゃ刺激が強過ぎる。


 あー、シーマ。

 その足、多分だけど治るぜ。


 だからアタシらの言う事を聞け。

 これはギルド直々の緊急依頼でも

 あるからな」


「ふは、はい……?」


なぜか疑問形になったシーマさんは、

起こしていた上半身を再び寝かせた。



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