第23話・inギルド


「さーて、一ヶ月ぶりのギルドだ!

 依頼は何にするかねえ」


そう言いながら、西部劇に出てくるような

両開きの扉を開けてみんなで入ると、


「これ以上のランクのポーションは

 もう無いのか!?」


「ダメ元で、治癒師ヒーラーを呼びに

 行ってくれ!」


薬師くすしはまだか!?」


と、何やらギルド内がドタバタしていて、


「な、何かあったんですか?」


ボクが問いかけると、すぐ1人の職員らしき

お姉さんが振り向いて、


「あ! アンディちゃん!

 という事は―――

 『クイーン・ビー』も!


 今ちょっと忙しいから……

 『レッド・バタフライ』のパーティーが

 ケガをしちゃって」


「「「!」」」


元ナースだからか、お姉ちゃんたちが

そのワードに一斉に反応する。


「ケガ人はどこだい?」


「アデリーナさん!?」


言うが早いか、アデリーナお姉ちゃんたちが

寝かされている『患者』たちの元へ

つかつかと歩いて行き、


加奈マイヤ理奈エヴァ

 取り敢えず血止めと緊急処置を行うよ!


 詩音レイラは患者が暴れそうだったら

 押さえて!」


前世の記憶がよみがえった使命感からか、

それとも同じ仲間を救いたい気持ちからか……

荷物から包帯や消毒薬を出して、

テキパキと対応していった。




「ふーっ、こんなものかね」


葵お姉ちゃんが額の汗をぬぐい、一息つく。


「アデリーナ、そんな技術をどこで」


金髪のウェービーヘアーを、目付きが鋭い

お姉さんがこっちに来て問い質す。


まあ確かに、包帯くらいはこちらの世界でも

巻くだろうけど―――

傷口の消毒から呼吸・脈の確認まで、

プロとしてこなしていたから……

不審がられるのも当然かも知れない。


「カミュギルド長、そんな事より―――

 『レッド・バタフライ』はどうしてこんな

 ケガを?


 特にリーダーのシーマのケガは」


あ、この人ギルド長だったのか。

そして一番ケガの酷かった、燃えるような

短い赤髪のお姉さんを見下ろす。


どうも片足をやられたらしい。

見ていて痛々しくなる……


「アーマークロー・リザードにやられた

 らしいんだ。


 リーダーのシーマは、それでメンバーを

 かばって―――


 なあ、正直な話、アイツの足は

 治りそうか?」


その質問に、葵お姉ちゃんを始め、他の

みんなも視線を下げる。


お姉ちゃんたちはプロだから、多分……

誰よりもわかっているんだろう。


「でも、アイツら『レッド・バタフライ』は

 まだそんな危険な魔物を相手にする

 腕前じゃなかったはずだ。


 何でそんな依頼を許可したんだ?」


「それは―――


 本来なら、『クイーン・ビー』向けの

 依頼だったんだよ。


 だけどアンタらはこの前来た時、もう

 依頼はそんなにこだわらない、みたいな

 事を言っていただろ?


 それでアイツら、『じゃあ自分たちが』

 って止めるのも聞かずに……」


その言葉に、お姉ちゃんたちは顔を

見合わせる。


もしも……『クイーン・ビー』が依頼を

受けるのに消極的になっていたから、

というのが理由なら―――

後味が悪い話だよね……


そこでボクは葵お姉ちゃんのすそ

引っ張って、


「ん?

 ど、どうしたんだアンディ?」


注目が集まる中、ボクは意を決して、


「あっ、あの―――


 ボクの『お師匠様』に診てもらう、

 というのはどうでしょうかっ」


そう、あの病院を使う事を暗に提案

してみた。



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