第18話・入院第1号


「あれ? あおいお姉ちゃん……」


「ん? どうかしたか?」


ボクが葵お姉ちゃんの手を見ると、そこから

血がポタポタと落ちていて、


「け、ケガしてない!?」


「ああ。

 さすがに灰色狼グレイウルフの群れ相手に、無傷という

 わけにはいかなかったからなあ―――」


「たたた大変!

 すぐに治療しないと……!」


そう言いながらボクがおろおろと周囲を

見渡し―――

何か手当に使えないかと思っていると、


「あ~……みっちゃん?

 私たちがナースだったって事、

 忘れてないッスか?」


「それにここは病院。

 治療する道具も薬もそろっているので、

 安心するのである」


加奈お姉ちゃんと理奈お姉ちゃんの

ツッコミに、思わずボクは赤くなる。


「何より抗生剤があるのがありがたい

 ですわね~。


 軽傷でも感染症が怖いですから~」


「そうだなあ。

 ったく、今までよくこんな世界で

 生きて来たもんだぜ」


詩音お姉ちゃんの後に葵お姉ちゃんが続く。


確かに、前世の記憶がある今では―――

よくあんな衛生水準で生活してきたと

我ながら感心してしまう。


「そんじゃリーダー。

 ケガ人は大人しく入院しているッス」


「感染症さえ起こさなければ、全治

 2週間というところなのである」


「それまで大人しく寝ててくださいね~。

 みっちゃんはこちらで面倒見ますから~♪」


「くっ、お前ら……!

 そう言ってアタシを隔離かくりする

 つもりだな!?」


葵お姉ちゃんを他の3人のお姉ちゃんたちが

連れて行こうとするのを見て、


「あっ、あの!

 ボクも手伝います!


 葵お姉ちゃん、何かして欲しい事は

 無いですか?

 何でもしますから―――」


そこでお姉ちゃんたちが一斉にボクの方へ

振り向き、


「な、何でも……♪


 あ~、そういえば気分が悪くなって

 きたなあ。

 不安だからみっちゃん、傷が治るまで

 一緒に寝てくれないかな~?」


葵お姉ちゃんのリクエストにボクはうなずき、


「う、ウン!

 それくらいお安い御用です!」


すると他のお姉ちゃんたちは、


「ずっ、ずるいッス!!」


「いつもならその程度のケガ、

 何でもないはずなのである!」


「役得をここぞとばかりにフル活用

 していますわ~!」


と、何でか文句を言い始め、


「くっくっく……!

 何とでも言うがいい!

 このチャンスはぜってー逃さねえ!!」


「あっあの!

 あんまり動くと傷口が―――」


葵お姉ちゃんがガッツポーズのような

姿勢を取ろうとするのを、ボクは何とか

止めてもらい……

その日は彼女の希望通りにしてあげる

事になった。


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