第3話・領主様への献上品

「あー……

 村が天候不順で、税を納められなくなって」


「はい。

 その税の代わりとして、ボクが領主様の

 ところへ行く事になったんです」


アデリーナ=あおいお姉ちゃんの

背中におんぶされながら、僕は質問に

受け答えする。


「要は税代わりの人身御供ひとみごくうか。

 ったく……」


ボクが生まれた村、というかこの世界……


何でも数百年に渡って各国が戦争を続けた

結果、


男が激減し、男女比率がとんでもない事に

なってしまったのだという。


確かにボクの村でも同年代の男の子は、

女の子7・8人に対して1人くらいの

割合しかいなかった。


村の人口はだいたい100人くらいで、

その中の男性はお父さんも含め、

せいぜい14・5人くらいだったと思う。


『子供』と呼べる男性はボクとあと

3人だけで、他はみんな女の子。


つまり男、それも少年はかなりの

『貴重品』で―――


村長さんからも、『いざという時、

お前を出すかも知れない』という話は

小さい頃から聞かされていた。


「まあこの世界じゃ、珍しくない話ッスね。

 でもその格好は何スか?」


「髪も伸ばしているし、結構似合って……

 じゃなくて!

 どうしてそんな格好をしているので

 あるか?」


マイヤ=加奈お姉ちゃんと、

エヴァ=理奈お姉ちゃんが続けて

僕の姿を見ながら話しかけてきて、


「こっちの方が、可愛く見えるからって

 お母さんが。


 ただ、ボクを税の代わりに差し出す事が

 決まった時、本当はこういう場合に

 備えて、女の子に変装させて逃がす

 つもりだったって……

 お父さんも泣きながら言ってました」


「なるほど。

 こっちの世界でもちゃんとご両親に

 愛されていたようで―――

 そこは安心しましたわ~」


レイラ=詩音お姉ちゃんがしみじみと語る。


そして今、とにかく馬車が襲われた地点から

離れ……

お姉ちゃんたちの拠点へ向かっているらしい。


「そういえば、お姉ちゃんたちはどこに

 住んでいるんですか?」


そこでアデリーナ=葵お姉ちゃんがボクを

おんぶしたまま、


「これと言って住む場所は決まってないねえ。

 今はとある山中にこもっているよ。


 冒険者パーティーと言っても、やっている

 事は傭兵稼業に近いし」


「でも生まれた場所とか結構バラバラみたい

 だったッスのに、よく集まったもんスよ」


「特に加奈、お前とは腐れ縁というヤツで

 あるなあ」


「まあまあ、でもこうしてみっちゃんとも

 会えたんだから~。


 そして記憶も戻るなんて、ドラマチック

 よね~♪」


葵お姉ちゃんの背中で揺られながら、

みんなの会話を子守歌のように聞く。


「冒険者かー、それでみんな強かったんだ!」


「何の因果かアタシらはみんな、それなりの

 スキルを授かったんでね」


「あ! そういえばみっちゃんは?

 どんなスキルを持っているッスか?」


「あ、今の僕の名前はミルトレッドで」


「そうだったのか。

 でも愛称は同じみっちゃんでいいんじゃ

 ないの?」


「それかミルちゃんですわね~」


そんな事を他の3人のお姉ちゃんたちと

話しながら、ボクは眠気と戦っていたん

だけど……


やがて背中でウトウトと眠りの世界へ

落ちて行っちゃって―――

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