第3話 初喧嘩!?
じぃちゃんの家から徒歩5分の新築マンションの最上階に連れていかれ、あれよあれよと部屋にまで案内される。
このマンション工事の時から見てたけど、まさか俺自身が住むなんて思ってもいなかったなぁ。
新築の香りを感じ必要最低限の家具家電が設置している部屋を眺めていると、伊集院やじぃちゃんは部屋を探検している様でバタバタしている。
「うわぁ、綺麗なお部屋!!
あっ、私の部屋もある!」
「実にいい住まいだ、わしらのおかげじゃな」
「まったく騒がしいな……」
「心夏がはしゃいでしまって、すまないね。
それと今回の話、引き受けてくれてありがとう」
冷めた目で見ていた俺と正反対に優しい目で二人を見ている照光さんが俺の隣にやってきた。
「まぁ、ほぼ脅しに近かったですけど期限付きなんで」
「ははっ、早速嫌われてしまったかな」
「それほどでも……あります」
「遊星くんは本当に素直だな……
そろそろちゃんとした内容を決めていこうか」
「……そうですね」
正直に言いすぎた気もするが、この位は許して欲しい。そして照光さんに声をかけられ、リビングテーブルに集まり各々座っていくのだがさっきまではじぃちゃんが隣に居たのに伊集院になっていた。
香水なのか分からないがちょっと甘い香りがしてソワソワする自分が嫌で、自分の顔をビンタした。
皆驚いてはいたが唯一心配してくれたのは原因である伊集院だけ。
「だ、大丈夫??
すごい音だし、ほっぺ真っ赤だよ!!」
「気にするな、自分を戒める為のビンタだし」
「でも…、真っ赤なままお話続けるのはあれだよね?」
「そうだな、ちょっと冷やすか」
「うん!私、ハンカチあるから冷たくするね!」
ハンカチを持って何故かご機嫌にキッチンに行くが、水で濡らさずそのままハンカチを冷蔵庫に入れて目の前で待っている。不思議すぎて、ついテーブルに手を付き立ち上がってしまう。
「あ、あのー、何してんの?」
「えっ?冷やしてるんだよ??」
「どんだけ冷えるの待つ気だよ!?
水で塗らして絞れば完成だから!」
キョトンとした顔をした後、本当だ!と言ったような顔で俺の言った通り水でハンカチを濡らす伊集院。
そんな光景を見て呑気にしているじぃちゃん達に嫌気がさす。
「まさかこんなのが毎回なんですか?」
「うーん、そのまさかだね、ははっ」
「結婚は根気じゃぞ!」
「……やっぱり一緒に住むのなーーし!!」
「えぇ!!なしをなしにして下さい!!」
キッチンから叫んでくる伊集院はまた泣きそうな顔をしている。
それにしてもなんでそんな俺と一緒に住みたいんだ?
伊集院なら選びたい放題だし立候補なんていくらでもいそうなのに。
「俺にこだわらなくても、伊集院さんの為に家事全般やってくれる男いると思うけど?」
つい冷たい言い方になってしまい、この場にいる全員がシーンとなってしまった。
居心地が悪いが席に座ろうとしたら、キッチンからびしゃびしゃなハンカチを持った伊集院がどんどん俺に向かって歩いてくる。
そして、水が滴っているハンカチを俺の頬に勢いよく当ててきた。
「うぇ、冷た!」
「………私は、何も出来ないです。
今までマネージャーさんとか皆が甘やかしてくれたから、でも私は遊星くんに怒られながらでも良いから出来るようになりたいんです!!
それで遊星くんのお嫁さんになりたいんです……」
頬から首に伝う水の冷たさを感じながら、伊集院の上目遣いの潤んだ瞳が俺を捉えて離さず自分の顔が熱くなってくるのを感じる。熱さをどうにかしたくて、顔を少しずらす。
「ごめん……、言いすぎた」
「えっと、その、私もごめんなさい 。
うわぁ、床がびちゃびちゃになってる!! 」
慌てながら伊集院は拭くものを探しにキッチンに戻っていく。俺はまだびちゃびちゃなハンカチを貰い、席に座ると目の前に居る2人のジジイから変な視線を感じる。
「……なんだよ」
「いや、これが夫婦喧嘩かと思ってな」
「えぇ、上手くおさまって安心しました」
「だから夫婦じゃねぇって!!」
少し落ち着いた顔の温度がまた急上昇するのを感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます