0-10 ドラゴン討伐②
「ようこそいらっしゃいました、フレイ・ハズラーク様。どうぞどうぞ中へ」
「すみません。オレ、その弟子でノアという者なんですけど」
「……え?」
村に着いた途端、村長に御挨拶した。そしてすごく困った表情でオレを見てくる。ま、いつも通りだな。
「あの……。あなたが、その、ドラゴンを討伐してくれる、ということですか?」
「はい。そのつもりで来たんですけど……」
周りの視線が痛い。それもそうだ。
フレイは普段ちょっとアレだけど、魔術師となればそれはもう、名の売れた魔術師。相当な実力を持っている。
それに比べオレは、名も無いただの子ども。魔術師として実力は不明だし、それにドラゴンを倒すにはまだ若すぎる。
ドラゴンは余程の才能が無い限り、最低十年はかかる。
「……わかりました。では、あなたにドラゴン討伐を依頼します」
「よろしくお願いします。じゃあまず、ドラゴンの居場所を教えてください」
村長は腹を括ってオレに改めて依頼を示した。
そしてオレと村長、屈強な村長の護衛たちと共にドラゴンの住処へ足を運ぶ。
「あの……一ついいですか?」
「なんですか?」
「あなたは先程、フレイ・ハズラーク様のお弟子さんと聞きましたが……。本当にドラゴンを討伐できるのでしょうか? もし必要なら私の護衛を使っても――――」
「村長さんが心配する必要はありません。オレはフレイに頼まれただけで……。フレイにとっちゃあ、ただの修行の一端ですから」
あいつは今頃たらふく限定スイーツ食ってるけどな……!
「そうですか。なら、改めてよろしくお願いします。さ、着きましたよ。これが例のドラゴンです」
「へぇ……」
そのドラゴンはオレが見たドラゴンの中でも二番目ぐらいに気迫がある。ただ寝ているだけのように見えるが、奴のセンサーは敏感で、奴の間合いに入った時点で襲ってくる。
――――奇襲は無理そうだな。
オレは背負っていたリュックから木刀だけを取り出し、他は護衛の人に渡す。
「あなたたちは先に村へ帰ってください。このドラゴンはもうオレたちがここにいることに気づいている。だから、村に戻って避難を――――」
物凄い重圧が体全体に響いた。
嘘だろ。まだお前の間合いになんて踏み込んでいないぞ。
奴は目覚めた。そして、冬なのにも関わらず暖かくしてくれた太陽が黒い雨雲に隠れ、やがて雨が降った。
「ガルラララララララララララララララ……!」
物凄い声量が森中に響かせる。村長とその護衛たちはその声量で腰を抜かしてしまった。
「おい……! 大丈夫か……!」
「無理だ……。君も逃げろ……。あのドラゴンは強いぞ!」
「ああ、知ってる。オレも何度かドラゴンは見たことあるけど、このレベルのドラゴンは初めてだ」
「ノア、と言ったか」
「なんですか、村長さん?」
「すまない……。君には依頼したが、あのドラゴンはさすがに上位魔術師でも手のかかる相手だろう。この依頼は無しで――――」
「ふざけるな……!」
オレは叫んだ。そして、こう言ってやった。
「オレはノア・ライトマン。魔術師ノア・ライトマンだ……! オレに不可能なんて無い!」
「……!」
「……! 君は……」
オレはドラゴンの方に立ち、村の方向に指さした。
「あっちに逃げろ。オレは逆方向にドラゴンを惹き付ける」
「だが――――」
「行け!」
「だが……」
「村長、あとは彼に任せて私たちは逃げましょう」
「……わかった」
護衛が村長を連れて逃げたのがわかった。
さてと、やっと仕事ができる。
オレは奴に石を投げつける。石は奴に当たり、オレはこう言って走り出した。
「お前の相手はこのオレだ……!!」
ドラゴンは自身の翼を広げ、オレについて行く。
よし、良いぞ。この調子だ。
オレは走り続けた。奴はオレを見ながらついて行く。雨を降らしたからか、得意の炎属性の魔術を使ってこない。ラッキーだ。
「ハア、ハア、ハア……!!」
くそ息切れし始めた。
「ガルラララララララララララ…………!!」
奴もオレについて行くのが飽きたようで怒号の声をあげる。
「あの、鬼師匠が――――……!!」
ああ、もう限界だ。
そもそもフレイがサボった仕事だ。オレが引き受ける必要なんて無かったんだ。
くそ。こうなった以上仕方ない。やってやるよ……!!
もうあの村から結構な距離が離れただろう。周囲に街も無い。
なら、ここで決着をつける。
オレは足を止めて奴の方に向いた。奴もオレが止まったことで空中で止まる。
「……お前に忠告してやる」
オレは木刀を振り回し、剣を構える。そして――――
「行くぞ。オレは最初っから、
「ガルラララララララララララ……!!」
ドラゴンとの戦いが始まった。
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