第4話 貴女は変わらない
桜と話していると桜のお家に着いた。家は隣だから外観は似てるかもしれないが中身は全く違うから何年行ってても少し緊張する。
「お邪魔しまーす」
「別に挨拶なんかしなくても大丈夫なのに」
「いやいや、しないとだめだよー」
流石に幼馴染みといえど気がひける。ローファを揃えてると桜が先に歩き出す。いつものように桜の部屋に向かう。
桜の部屋はいたってシンプルだけどお洒落さも忘れない素敵な部屋だ。薄い白いカーテンが掛かった窓。机には昔一緒に作ったハーバリウム。整えられた参考書。
お揃いで買ったシャーペンがたてられたシンプルなペン立て。花形のランプ。
白のドレッサー。
私が誕生日にあげたくまのぬいぐるみがベッドの横に置かれているのがいつも嬉しい。
この部屋を見るだけで、桜の生活が見られる気がして嬉しいのは私が変なのだろうか。
桜がお茶を取りにいってくれている間に、宿題をすすめる。
「んー、ここがこうなるからー?」
解説を見ながら解く。高校2年生にもなると勉強は少し難しくなる。
「あれー?ここに当てはめたらこうなるはずなのに、何でかなー」
「何でならないのー?もー、難しいよ」
勉強してるときについ独り言を言ってしまってるのは気のせいだ。 多分。
コンコン
扉をノックする音が聞こえる。
「はーい、今開けるよー」
開けると桜がお盆にお茶とお菓子を乗せてきてくれていた。
「はい、お茶とお菓子持ってきたよ」
「わぁ、ありがとー!」
「、純恋、数学の問題でわからないところある?」
「何でわかったのー?もしかして独り言聴こえてた、?」
やばい。そうなら恥ずかしすぎる。たとえ幼馴染みでも独り言は自分でも無意識だから聞かれるのは嫌だ。
「うん、聞こえてた。相当悩んでるのかなって」
「わー!忘れて!聞かれてたの恥ずかしい、」
「なんで?可愛いから大丈夫だよ」
「桜が大丈夫でも私は大丈夫じゃないの!」
「ごめんごめん。それでどこがわからないの?多分、教えれるから良かったらきいて」
「ほんと?!助かるー!えっとね、大問5の1のここで、」
「うん、そうだね。そこは、こっちの公式を応用してこの形にして、」
「んー、こういうことー?」
「そうそう、それでここが求まるから、」
「この解を変形して戻すってことー?」
「そうだね。後はそれをー」
髪を耳に掛ける動作だけで様になるのが羨ましい。見すぎていたのだろうか、桜と目が合う。
「純恋~、きいてた?」
「ごめんね、ちょっときいてなかった」
「もー、次はしっかりきいててね?これはー」
「できたー!ありがとう、桜。桜のおかげでわかったよー」
「それは良かった。疲れただろうしおやつでも一緒に食べよ?」
「うん、食べるー!」
いつも優しく教えてくれて気遣いまでしてくれて努力家な最高の親友で完璧な幼馴染み。
私は
「純恋ー?どうしたの、?大丈夫?」
心配そうに覗き込む貴女に触れたくなる。
大丈夫って言ってって言いたい。
どこにも行かないって言って欲しい。
でも困らせたくない。から
「ちょっと考え事、!ぎゅってして欲しい、」
「もちろんいいよ、おいで」
優しさと温もりに包まれる。
少しでも心を落ち着かせたい。最近はこんなことばかり考えている。私は桜の恋人でも家族でもない。親友だけどそれ以上でも以下でもない。優しさに甘えすぎている自分が嫌になる。色んな考えがぐるぐる回るけど今だけは貴女に身を委ねた。
涙が一筋伝っていたのは、見ないふりをした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます