片翼の天使

第1話 ハイドル=ユーデンライト

私は、目を覚ました。

あれからどれぐらい経ったのかは分からないけど、ただ一つ言えるのは、ここは人間界だってこと。


でも、緑が綺麗だなぁ...魔界はそこら辺が荒野だったし(戦争の影響かもしれないけど)、天界では暗殺されるかもという不安でまともに観光出来なかったし(結局そんなことは1度も無かったけれど)...


「うん?...君、こんなところで何してるの?」

不意に、誰かの声が聞こえた。

見ると、黒髪の少年が、こちらを見ていた。

ここは事情を話した方がいいか?いや、天使なんて言っても信じてくれないだろうし...


「あれ、おーい?」


いや、一回信じてくれなくとも言うべきか。


「あ、すいません。考え事をしていて...

で、ここで何をしているのか...まぁちょっとだけ、長話になるんですけど...


······


というわけなんですよ。」


話し終わると、何故か目の前の少年は涙を流していた。どうして?


「そうか...君はそんな人生...いや天生か?を送ってきたんだな...君、名前は?」


「名前は...」


ハイドル・レイン=ユーデンライト、と言おうとしたが、片翼を失って、その名前に汚れをつけてしまわないか心配になったし、翼が片方しかない私にハイドルとレインどっちも取ろうなんておこがましい。

だから私はこう答えた。


「ハイドル=ユーデンライトです。」


雨という意味を持つレインは、私の心に雨を降らしてしまいそうだった。


「分かった、ハイドルだな。それにしても...食と宿と服はあんのか?」


盲点だった...天使といえども衣食住は欠かせないものだ。


「その様子じゃあ、盲点だったみたいだな。良かったら、家に来ねぇか?」


ありがたいお誘いだ。


「でも、いいんでしょうか...私みたいな部外者が勝手に押し掛けてしまって...」

「だいじょうぶだいじょうぶ、僕の名前出せばいけるから!そういえば、名前言ってなかったね。僕の名前はナイト・レイフ・ヤイドール。ヤイドール家っていう子爵の、跡継長男ぎさ。」


えーと、うん、ごめん。

なんで子爵家の跡継ぎがこんなところにいるの...?

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