片翼の天使

夜桜洋和

第0話 天魔大戦

始まりは、本当にくだらないことだった。


天使と悪魔それぞれを従える2柱の女神は姉妹で、仲もよかった。ただ、あるとき姉の悪魔を従える女神...ナースドが、妹の天使を従える女神...マリアから、ちょっとしたイタズラで甘味を盗ってしまった。

女神の甘味といえども、本当にちょっとしたお菓子で、曰く、かすてら?というものらしかった。


そして、甘味を盗られたマリアは大激怒。真っ向から姉をぶん殴りにいっていき、それに反撃を...

という形で、憎しみの連鎖は続き、いつしか自分の臣下である天使と悪魔たちも戦いに加わり、いつしか天界と魔界を揺るがす大戦争となってしまった。


そして、いま...


「次。」


私、天使のハイドル・レイン=ユーデンライトは、魔界の戦地で悪魔を浄化虐殺し続けていた。


私だって、こんな仕事やりたくない。でも、行政部はそうは思わないらしい。

行政部とは、一言で言うならば表向きは"天使の一番偉い組織"で、私は"人間の真似事賄賂をしてふんぞり返ってるやつら"だって思う。これでも私はまぁまぁ偉い天使だから、行政部には何度かいったことがあり、その醜すぎる現場を何回も見てきたのだ。

そんな彼らからすれば、功績を挙げて地位が確立されていく私のことが邪魔なのだろう。こうやって、何回も戦地に立たせ、しかも劣勢の地に立たされるのだ。


「ふぅ...今回も終わったかな。」


だけど私は、そんな戦を何度も何度も繰り返し生き抜いてきた。だから、今回も勝ち星を納めた。どんな障害も、越えて見せる。


でも、現実は私が想像してたより厳しかったらしい。



「......よって、ハイドル・レイン=ユーデンライトを人間界に堕とす!堕落した天使には必ず女神様の裁きを!」


いわれのない罪を着せられ、私は天界から落とされようとした。

でも、私には翼がある。天使皆にだけど。

その翼で天界に舞い戻ろうとした...けれど、私の右翼は、




―――――――エンジェルジャッジメント、

その言葉と共に撃ち抜かれ、

私の体と離れていき、

私は、

人間界に、

堕ちていった。

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