『アモンカスタの鐘』 中の上


 議長閣下とシッポックは、深海潜水艇『五時半(ハーフパストファイブ)』に乗り込み、遥かな南の海に向かったのである。


 遥かな、と言っても、超高速潜水艇は、音速を超えて海の中を走る。


 音のバリヤーを張るので、ぶつかってくるものは、その先に排除されてしまう。


 つまり、海の生き物には、かなり、迷惑な乗り物である。


 しかし、バリヤーの中は覗けないから、潜水艇か怪獣かは、区別がつかないのである。


 もし、怪獣ならば、さすがの宇宙海賊も、歯が立たない。


 ちなみに、ネサ・ゲラーや、ネア・ゲラー以外にも、怪獣はかなりいたのだ。


 けれども問題は、島の周囲に近づいたあとである。


 上陸できる場所は、一ヵ所だけしかない。あとは、断崖絶壁だ。


 さらに、そこは、宇宙海賊が海上封鎖し、占領しているから、簡単には上陸できそうにない。


 宇宙海賊は、別にこの島が欲しいわけではないが、占領した領域の中にあるから、地球人類が近づくのはいやなのである。つまり、宇宙海賊は、ひどく縄張り意識が強かったのだ。もし、突破されたりしたら、それは、まさに敗北を意味する。だから、鐘をついたら、地球人類の勝ちとなるはずなのだ。


 が、なにしろ、議長は高齢者である。


 また、ヘレナさまは、なぜだか、『このお告げは、戦いをすると無効になります。』と、言っていた。


 なかなか、スパイ・ナンバー・バロックのようには行かないのだ。


 しかし、ミスター・シッポックは、昨年来た時に、かつて日本の寺院でみかけた、超音波自動かねつき装置を仕掛けておいたのである。ただし、予算の都合もあり、リモコンは、島の周囲でないと効かない。メンテナンスしてないから、動くかどうかも判らない。


 島の周囲は、浅瀬や岩礁ばかりで、危険極まりない。


 波は荒く、普通のボートでは近づきがたい。


 通常ならば、地球連合特製、特殊耐性ボートを使うが、宇宙海賊や、怪獣に攻撃されたら、そらもう、ひとたまりもない。


 ちなみに、ネサ・ゲラーは、祭については、慣例的に、見て見ぬふりをしていた。


 『まあ、泳いで渚まで上がるしかないですな。』


 『んな、無茶苦茶な。』


 議長は呻いたのだ。


 とは言え、やり始めた以上、議長も簡単には引き返せないのは、分かっていた。シッポックは、見張り役でもあるのだから。


 そこで、2人乗り小型潜水艦に乗り込んで、ふたりは、島への接近を試みたのである。


 が、やってみたら、ききしにまさる、とはこのことで、海の中の海流が異常に早く、しかも複雑で、なかなか、島には近づけない。


 とうとう、海底の洞窟に引きずり込まれてしまったのである。


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