第8話 初めての戦闘

「おらああぁぁぁぁっ!!」


 一人の山賊がニヤリと笑い、フレンに襲い掛かる。


「おいおい一人に対して複数かよ——回避っ」


 しかし、フレンは余裕の表情でスルースキルを発動し、すっと後ろに一歩下がって攻撃をかわした。


「ほら、もっとよく狙ったら?」


 山賊たちの一撃は空を切り、フレンはひらりと身をかわす。

 その様子に驚きの表情を見せる山賊。


「なん……だとぉ……!?」


 さらに別の山賊が振りかぶるが、その動きを見切ったかのように、フレンは横へと軽く一歩移動して、相手の攻撃をすり抜けるように避けていく。


「この野郎、じっとしてろ!」

「はいはい回避っと」


 苛立った山賊が鋭い突きを放つが、フレンはその動きにもひるむことなく、軽く体をひねってスルー。バランスを崩した山賊が無防備になった瞬間を見計らって、フレンは手刀で相手の脇腹を打ち、山賊は呻き声を上げて崩れ落ちた。


「ぐぁぁっ!?」

「……あれ、案外簡単だな」


 次々と襲いかかる山賊たちの攻撃を巧みにかわしながら、フレンは冷静に相手の隙を見極めて反撃を入れていく。手刀を正確に急所へと打ち込むたびに、山賊たちは一人、また一人と地面に倒れていった。


「なんなんだこいつ、全然当たらねぇ……!」

「そっちこそ、どうした? 俺はただの雑魚なんだろ?」


 余裕を見せつけるフレンに、残った山賊たちは顔を青ざめさせる。

 しかし、それでも最後の一人が大声を上げながら振りかぶって襲いかかってくる。


「おりゃああっ!」


 だが、フレンはため息をつきつつも、その攻撃を軽くひらりと避ける。

 その間、彼には分かったことがある。


「(あれ、意外とスキだらけだな? 今の瞬間に一撃を与えたら……やってみるか)」


 相手の体勢が崩れた隙を見て、フレンは冷静に手を構える。そして、山賊が完全に無防備になった瞬間、素早く一撃を加えた。


「ていっ」

「ぐぁッ!?」


 手刀が的確に相手の首元を捉え、山賊は呻き声を上げながら地面に崩れ落ちる。周りの山賊たちはその様子に驚き、フレンを睨みつけて慌てた様子で叫び始めた。


「な、なにが起こったんだ……!」

「構うもんか、お前らやっちまえ!」


 しかし、フレンはすでに山賊たちの動きが手に取るようにわかるようになっていた。スルースキルを発動しながらも、相手の攻撃を見極め、次々とかわしていく。


「おい、なんで当たらないんだよ! こいつ、どうなってやがる!?」

「さぁ、どうだろうね。ただの“スルー”の効果かもな」


 山賊が慌てふためく中、フレンは一人一人の隙を冷静に見定め、軽く手刀で急所を打って倒していく。


「そ、そんな馬鹿な……!」


 残った山賊たちは焦りを隠せない様子で次々とフレンに襲いかかる。

 だが、フレンはスルースキルを活かして、滑らかな動きで全てを避け、余裕の表情で次々に山賊たちを倒していった。


「ぐぅ……なんてやつだ……!」

「もうやめた方がいいんじゃないか? お前ら、完全にスルーされるために剣を振り回してるようにしか見えないぞ」


 フレンの淡々とした口調に、残りの山賊たちはついに戦意を失い、驚きと恐怖の表情で一斉に後ずさりを始めた。


「く、くそっ! 覚えてろよ!」


 最後の一人が捨て台詞を残し、山賊たちは次々と逃げ出していった。


「ほんと、仕方ない奴らだな……」


 一連の戦いが終わり、フレンは腕を軽く振ってため息をつき、肩をすくめている。

 その姿を見ていたルーナは微笑みながら、礼を述べた。


「フレン様、やればできるじゃありませんか」

「はあ……無理矢理首根っこを掴まれてなければ、面倒事は避けられたんだけどな」

「ですが、こうして助けられたのですから、良いことではありませんか?」


 フレンは内心「面倒くさい」と思いながらも、ルーナを助けることが出来たことに少しだけ安堵していた。


 また、彼女の言葉にフレンは苦笑しつつも、どこか誇らしげな気持ちで頷いた。

 スルースキルだけで全てを回避できるわけではないが、活かし方次第で意外とやっていけるものだと、フレンは少しずつ感じ始めていた。


 



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