day1
会議から3週間後、久々に日本へと戻ってきた僕は携帯を見て驚愕する。渚から鬼電が来ていた。メッセージの通知は9999件。電話の件数もエグいことになっており、緊急通報で何件が来ていた。結構心配になった僕は渚に電話する。
「あ、もしもし?大丈夫?」
「鬼ごっこまであと四日なのにどこ行ってたんですか。あ、いや別に寂しかったから緊急通報で反応してもらおうとかそんなことは考えてませんから。」
緊急通報の使い方知らないだろこいつ。
「中国まで修行。全く声色変わってないけど。」
「いいですか?うさぎはは寂しいと死ぬらしいですよ。」
「渚って兎キャラだっけ?どっちかというと飼い猫に近いと思うんだけど。あと、その説は嘘らしいよ。」
「飼い猫も寂しいと死にます。」
「それは本当です?」
絶妙に合ってそうで間違ってそうな雑学だな。
「とにかく、私にあまり寂しい思いをさせないでください。あと、どこか遠くに行くときは2日に1回くらいは連絡してください。」
機械的な声だが一言一言に申し訳無さを感じる。
「あ、それはごめん。連絡したかったんだけど修行場、中国の奥地で電波通らなかったんだよね。」
「そうですか。あ、お土産ってあります?」
「自由だね。君。空港で買ったクソダサキーホルダーならあるけど。」
「それでいいです。次会うときください。」
渚はそれだけ言うと、電話を切った。
4日後、7月25日、9:00
僕は小さめの筏に乗りながら無人島に近づいていた。渚通話を繋ぎ、配信を開始した。
渚は自宅からカメラでリアルタイムで送られてくる映像を見ながら、たまにサポートをしてくれる。
「それでは告知していた無人島鬼ごっこ初めて行きます!」
“待ってました!”
“3週間ぶりの復活”
“今日から七日間か……”
同接は一万人。大手とコラボするからかいつもよりも人が多い。
その時、遠くから殺気を感じた。島の方からだろう。多分相手は狙撃系の銃、魔法使いの風吹。
もう居場所がバレているのか。
「もう向こう側に居場所バレたっぽいんで、今から泳いで島まで行きます。」
“早くね?”
“多分風吹だろ。”
“ここから島まで泳ぐってマ?(小学校時代だるま浮きで終わった人)”
“俺はボール拾うやつで駄目だった。”
僕はアイテムボックスをしまい、カメラがついてくるのだけ確認すると、海の中にとびこんだ。
その頃、追跡者チーム。
風吹がライフルのスコープから目を離しながら言う。
「逃げられた。ごめん。神野様。」
ちょっとしゅんとする風吹に神野は一言。
「大丈夫です。探知魔法の結果はどうですか?風吹。」
「周囲20キロ探してみたけど反応無し。もしかしたら本当に魔力ないのかも。」
その言葉を聞くと神野は唇に指を当て、考える素振りをしながら、
「それではケイと禍威は対象が上がって来そうな海岸を見張っていてください。」
「「はい。」」
「風吹は周囲の海面を観察してください。相手は人間です。途中で息継ぎ1回くらいはするでしょう。」
「わかった。」
すると風吹は『千里眼』のスキルを使い始め、周囲を観察し始めた。
7月25日9:02
僕は崖のような海岸をよじ登り、島へと上陸した。
「うわ……服ビショビショ……」
「殆ど服着てないからいいじゃないですか。」
珍しく渚がツッコミを入れる。僕は今海パン1枚とサンダルの殆ど服を着ていない状態。
“渚さん、上手い。”
“服着ろ。”
「一応ここからはヒルとかいるかもしれないから服は着るよ。あ、着替えだから1回カットで。」
それから僕は海パンから黒い修行用の動きやすいズボンを履き、サンダルから登山靴に履き替える。
配信を再開すると、
“何が服は着るよだよ。半裸じゃねえか。”
“露出狂チャンネル海野源”
“なぜそこまで上裸にこだわる。”
“すごい関係ない話なんだけど、さっきなんか男の乳首が云々って夢を見たんだよね。”
「言われてますよ。源。」
「いいの!それじゃ今からミッション1、島中央の山頂まで行ってロケット花火を打ち上げろを実施します。」
“名前呼びキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!”
“カプ厨、うるせえ。いいぞもっとやれ。”
“ミッション1クリアできたら赤スパ。”
「それでは山まで全速力で行きます。」
僕は山の頂上へと駆け出した。
同時刻。追跡者チーム。
「ミッションが来ました。山の頂上に対象はやってくるでしょう。」
「あ、見つけました座標15000、12、4000に対象を発見。時速100kmほどで島中央まで移動中。到着までは大体15分ってところですかね。」
「時速100km⁉︎とにかく、ケイ、禍威は今から送る予想ルートに罠を設置、対象が近づき次第戦闘へと移ってください。風吹は狙撃準備を。」
「「「はい」」」
9:16逃走者チーム
僕が全速力で走っている途中、妙に落ち葉が積もっている場所を見つけた。それを回避しようとして、落ち葉ではない場所を通ろうとした時、地面ではない何かを踏んだ事に気がつく。
地雷か。
僕はそれに気づき、瞬時に距離を取ろうと、右側に移動した。すると、今度も何か変なものを踏んだ事に気づく。これは?
その瞬間、地雷の爆発を喰らうと同時に何かに右足を挟まれた。
そのまま3メートル程飛ばされた。
起きあがろうとした瞬間、右足に激痛が走る。
見ればギザギザした金属製の罠に右足を挟まれていた。
足には4箇所程、金属製の罠により、刺された傷がつけられている。
その時、何者かが飛びかかってくるのを察して寝返りを打つような形で避ける。
飛びかかってくるのは禍威と呼ばれる少女。腕にはウルヴァリンのような金属製の爪をはめており、獣のような体制で構えている。フーッフーッと荒い息をあげながらこちらをギロリと見ている。
「海野源、だ……ですよね?今おま……あなたは罠で自慢のスピードを発揮できない状態。大人しく私に捕まってください。」
そして再び飛びかかってくる禍威。僕は罠がついた右足でケイの爪を弾く。
そして距離を取り、無理矢理こじ開ける形で罠を外す。
軽く右足を動かし、ちゃんと動くことを確認する。
「これで全快だね。禍威、君の戦い方は知ってる。まるで獣のような我が身を顧みない戦い方……」
さらにもう一度、禍威は爪で切りかかってくる。
「動きは単調。力と魔力を制御せず、無理矢理ぶん回している状態。」
僕は左斜め後ろにすり足で移動し、手が届く距離に入った時、禍威の腕を掴んで軽く投げる。
「合気道っていう武道があってね、僕はまだそこまで上手くないけど、この武道は一言で言えば相手の力を使う武道。特に君みたいな力をぶん回している相手には一番使いやすいんだよ。」
そのまま、頭から地面にぶつからないように投げ、地面に倒れた禍威の上にまたがる。そしてそのまま頭を掴み、揺らして脳震盪を起こそうとした時、ある事に気がつく。
この体制、色々とアレなんじゃないか?
なんか禍威も投げられた衝撃なのかとろんとした顔してるし、僕が押し倒した状態みたいになってるから襲ってるみたいだし……
禍威がボソッと一言。
「その……配信中ですから……そういう事をするなら終わった後で……」
「いや、しないからね?」
その時、後ろに誰かがいる事に気づく。ふと後ろを見ると、刀を振りかぶった少女が立っていた。少女はそのまま刀をふろ下ろしてくる。
「カイちゃんから離れろおおおおおお!!!!」
「真剣白羽取りィィィィ!!!!」
僕はギリギリで真剣白羽取りで刀を止める。
「マジで死ぬかと思った……」
その少女はケイという少女。ケイは刀から手を離すと、左手に銃を顕現させ、そのまま僕に向けてくる。
「仕事を受けてのはそういう目的だったか!このクズめ!」
「いや、ちょっと弁明させ……いや、打ったら禍威に当たっちゃうから!」
「覚悟ぉぉぉぉ!」
放たれる銃弾。
僕は禍威に当たらないように禍威を抱き上げながら避ける。
「落ち着こう!」
「そんな……強引に……」
「源、失望しました。」
「渚は黙ってなさい。」
「お前を島からは返さない!『剛力』『妖刀』『強打』」
「あー、もうめちゃくちゃだよ。」
ケイが振り下ろしてくる刀を受け流し、顎に軽く打撃を与える。
すると、ケイは脳震盪を起こし、フラリと倒れた。
僕はそれを確認すると逃げるように山頂へと向かった。
同時刻、追跡者チーム。
「禍威とケイが戦闘不能?」
「はい。対象が山頂に行くまで5分もかからないかと。」
「しかもケイはまだわかりますが、禍威に至っては……わかりました。風吹。対象に狙撃を。」
「はい。」
9:26逃走者チーム
僕は山頂まで到着し、アイテムボックスからロケット花火とライターを取り出す。ロケット花火を地面に置き、ライターで火をつけようとした瞬間、何かが飛んできてライターが破壊される。
手にかかったライター内部の液体を見て僕は無言になる。
“あ……(察し)”
“これは……”
“泣いていい。泣いていいんだッ!”
何かが飛んできた方向に目を向ける。風吹と呼ばれる少女がいるのに気づいた。
僕はそちらをキッと睨む。
そして息を吸い、足に力を込め、その風吹という少女がいる所まで全力で走った。
ミッションなどどうでもいい。この世にはやっていい事とやってはいけない事があると教えるだけだ。
僕は走り、何かを察して逃げた風吹の跡を追いかける。
完全に追跡者と逃走者が入れ替わっていた。
風吹はその時、めちゃくちゃ恐怖を感じていた。
10:00逃走者チーム。
風吹を仕留めた僕はそういえば摩擦で火を起こせるという事に気がつき、山頂で火を起こし、無事、ロケット花火を打ち上げた。
その頃、島にはもう一人の追跡者が入って来ていた。名は明星遥。
別名、キング。世界最強とも呼ばれている冒険者の一人。
所属は『LEO』
彼女は無様な姿となった追跡者チームの様子をスマホで見ながら、一言。
「やっぱりこうなる……瞳は少し、私のことを信頼した方がいいのに……」
彼女の参戦がこの逃走中の難易度を上げるという事をまだ海野は知らなかった。
11:00禍威andケイ
「大丈夫だった?カイちゃん。あの男に襲われてたけど。」
「私は大丈夫。それより、今、あの人はどこにいるの?」
「私達が寝てる間にもう山頂まで行っちゃったみたい。」
「そう……」
禍威が頬を染めている事にまだケイは気づいていなかった。
禍威(本名、月島カイ)
ケイ(本名、月島圭)
その時、遥が、
「大丈夫?みんな無様にやられてるけど。」
「「遥様、ちゃん!!」」
遥は背負っていた風吹を下ろす。
「それにしても、風吹、重いわね。」
「胸が大きいだけ。遥と違って。」
「この場で爆発魔法ぶっ放していい?」
「それはやめて。」
「それにしてもあなた達、やられすぎじゃない?」
「「「それはすみません。」」」
「ちゃんと反省してるの?」
「反省してます。」
「ならいいのだけれど。今から私も作戦に加わるから。いいわね麗華?。」
「うぅ……お願い 。あと今仕事中だからジンって呼んで……」
「たまには私の力も借りなさい。」
「でも私がなんとかしないと……遥さんが……」
「別にこれぐらいどうって事ないわよ……」
「すごいクマ作ってますけど……」
「大丈夫。問題ない。3轍で大きめのダンジョン潰して来ただけ。」
「ちゃんと寝てから来てください。」
「いえ、このくらい大丈夫……」
遥がフラリと倒れてしまう。カイとケイは瑞希を支えると、
「一度体制を立て直しませんか?」
「そうですね。遥さんがいないと防衛は難しそうですし、一度休むのも手でしょう。」
「賛成。」
そうして彼女達は拠点へと戻るのだった。
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