企画会議・準備

 翌々日、僕は『LEO』の事務所に来ていた。一緒についてきた渚は今日に限っては遅刻をせず、全くお茶目な面を見せていない。

理由を聞いてみれば、初対面の人に会うとき、物凄く緊張するかららしい。

そういえば面接のときは遅刻しなかったな。


そんなことを考えていると、会議室という場所に通された。

中には既に七人程の人がおり、全員が僕を見るなり、おお!本物だ!となっていた。

僕と渚が椅子に座ると、説明が始まった。

部屋の照明が落とされ、プロジェクターにスライドが投影される。


スライドには「無人島でトップ冒険者から逃げろ!~2028〜」と映されていた。


「それでは本日説明させていただきます。十六夜(いざよい)と申します。それでは今回の企画、『無人島でトップ冒険者から逃げろ!〜2028〜』の企画概要、ルールについて説明します。

まず、本企画、は神野麗華(かみのれいか)様率いる禍威(カイ)、風吹(フブキ)、ケイ、遥様の追跡者グループと、海野源様と、渚様の逃走者グループに分かれての逃走中を行わせていただきます。

それでは詳しいルール説明に移ります。

逃走者グループのお二人は企画開始当日、島に入って頂き、追跡者グループから逃げながら、4つのミッションをこなして頂き、島から脱出するのが目的となります。仮に島から脱出できた場合、300万円の賞金が入ります。

ですが、武器使用、スキル使用、魔法使用につきましては、逃走者グループは禁止とさせて頂きます。

追跡者グループの方たちは企画開始2日前より島に入って頂き、準備を整えていただきます。そして追跡者グループの皆様は逃走者グループを行動不能にした場合勝利となります。

追跡者グループの皆様は武器使用が可能となります。」


「大分不利ではないですか?」


「海野様は基本的に武器を用いない戦闘スタイルで配信されているので大丈夫かと。それともいつもスキルでも使っておられるのですか?」


なるほど。この企画は未覚醒者を名乗っている僕の化けの皮をはぐのが目的か。


「いや、使えませんけど。純粋に不利な内容が多いので何かあるのではないかと思っただけです。あ、すみません。説明を続けてください。」


「それでは再び説明に移らせて頂きます。期間は7月25〜31日です。そしてこちらから支給品についてなのですが、海野様にはアイテム収納用のアイテムボックス、魔力がなくてもご使用いただけます。そして水中でもご使用いただける自動追跡、ドローンカメラを支給させて頂きます。

それでは説明は以上です。」


説明が終わると、僕達は参加の意思を問われた。これから有名になるのにも必要かと思い、承諾。


 それから帰りに、一瞬、会議室の前を通りかかった時、追跡者チームの四人が話しているのが目に入った。

その時、ふと聞こえた言葉。それは、


「あ、あの海野って人、技術すごいし……勝てますかね。」


そう言ったのはケイと呼ばれる少女。


「私達の仕事はこの海野っていう人を追い詰めてスキルを使わせること。すぐじゃなくてジリジリ攻めていくの。そうだよね。神野様。」


そう言ったのはフブキと呼ばれる少女。


「ええ。そうです。私達であの男の化けの皮をはぐのです。この四人なら楽勝ですよ。」


これは神野と呼ばれる少女。


「燃えてますね。神野様。流石です。」


最後の禍威という少女の言葉。

僕の中で何かがプツンと切れた。必ずやあの女共に目にもの見せてやると。

僕はある人物の元へと電話する。


「あ、師匠ですか?前に言ってた呼吸法の達人紹介してくれません?わかりました。明後日から中国ですね。わかりました。」


僕は電話を切る。

鬼ごっこまであと3週間。みっちり修行してあいつらに目にもの見せてやろう。

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