[悲報]アシスタント、やらかす。
アシスタント
翌日、2回目の配信の日。
僕は目的のダンジョン近くで渚さんを待つ。メガネをかけてちゃんと服を着ながら。
集合時間5分後。渚さんは来る気配がない。あんな真面目そうな人が遅刻とかするわけが……
と考えながらDMを見ると、
「寝坊したので10分くらい遅れます。」
あ、まあ正直に寝坊って言ったのは好感が持てるけど、寝坊⁉︎今18時だぞ?
10分後。渚さんが待ち合わせ場所に来た。
「すみません。昼寝をしていまして。」
「ま、まあ土曜だしね!うん。次回からは気をつけようか!」
「ちなみに前いたパーティーは遅刻でクビになりました。」
「あ、常習犯な感じか……」
「まあ仕事はしっかりやるので期待しておいてください。このスーパーアシスタントにお任せを。」
「うん。期待してるよ。」
そんなことを言ってから1時間後、配信開始から20分後。
ダンジョンの低層でモンスターを全て倒し終わり、さあボス戦に行こうとしている時。
ボス部屋の扉を開けかけた時、渚さんが
「私の仕事は撮影だけですよね?」
「うん。そうだけど。」
「私は戦わなくてもいいんですよね?」
「まあ出来るだけ渚さんが戦わなくてもいいようにするけど、本当にやばい時は後ろからスキルとか撃って欲しい。」
「わかりました。私は完璧なスーパーアシスタントなので問題ありません。」
「スーパーアシスタント?すごいってことかな?」
“スーパーアシスタントwww”
“この人絶対おもろいwww”
僕は扉に体重をかけ、扉を押し開けた。
すると、目の前にいたのはティラノサウルスみたいな15メートル程の恐竜。
扉を開けた瞬間、とてつもない大音量で鳴き、その場の空気を震わせる。
そして周りの空間も一瞬にして変わり、ジャングルのような見た目になった。
「なんていうんだろ。あれ。」
「『チラノ』ですね。」
「へえー物知りなんだ。それじゃ行って来る。」
僕はそう言うと、足に力を入れて地面を蹴り、前に向かって体を回転させながら飛ぶ。
大型の相手には柔術はほとんど使えない。そして相手が人外ともなると、相手の痛覚を刺激するよりも、身体を破壊する方が有効打となる。
今回の場合はティラノサウルスが相手。急所はよく分からないが、心臓の辺りを打撃技で刺激し、ダメージを与えるのが最善。そして何を使って来るか分からない相手にはなるたけ長期戦はしない方がいい。
そのため、一撃で仕留める必要がある。
蹴り技の威力を上げるためにはどうすればいいか。
それは回転をして遠心力を生み出して打撃の威力を上げること。
一撃必殺『2520°』
『2520°』が直撃した瞬間、ティラノは10メートル程後ろまで吹っ飛び、倒れた。
直後、小さな光の粒子となって消滅し、そこには黄色の魔石が残った。
“おおおおおおおおおお”
“これはやばい。”
“一撃!!”
「よし。これを地上まで持って帰ってと……」
「何言ってるんですか?ボス戦はまだまだこれからですよ。」
「それってどういう……」
その瞬間、キリンのような首の長い生物の首が周囲の木を薙ぎ倒しながらこちらにすごい勢いで振られて来るのが見えた。
多分あの軌道だと間違いなく僕と渚さんがいる所を通る。
だが、渚さんは全く動こうとしない。
これは危険だと判断し、渚さんを抱くような形で生物の首を避ける。
そしてすぐに渚さんを下ろして、
「逃げよう!あれは倒せるか怪しい!」
それから二人でその場から走り、生物と距離を取ろうとする。
「なんか遠距離攻撃系のスキルとかない?」
「私、アシスタントなので、撮影系のスキルしか使えなくて……」
「ナギサァァァァァ!スキル、バトルもので撮影系って言葉始めて聞いたよ!というかさっきスキルで後ろから援護できる?って聞いた時、なんかわかりましたとか言ってなかった?」
「わかりました(できるとは言ってない)ですから。」
「そんな運転免許の○×問題みたいな!」
「とにかく私に期待しないでください。というかなんで武器の一つも持参してないんですか。」
「そんなねえ、未覚醒者の高校生のお財布は武器買える程余裕ないの!それに魔力使えないから武器なんてあってもただのがらくただし。」
「……もう終わりですかね……」
二人の間に諦めムードが漂い始める。
「諦めんなぁ!」
「あ、その前に給料お願いします。」
今それ言う?なんかいい話風に今から立ち上がる予定じゃなかった?
「ナギサァァァァァ!!」
「ちなみにこの仕事って保険とかどうなってるんですか?」
「今する話じゃないでしょ!とにかく今はあの化け物どうやってしばくか考えよう。」
「私は役に立ちませんよ。指揮なら一応できるかも知れないですけど……」
「マジで⁉︎」
「昔戦略ゲーやったことあるので。」
「あっ、ふーん。」
「どうです?やってみます?」
僕は一瞬考えた後、ニコッと笑いながら、
「ま、まあやるだけやってみようか。動画的にも面白そうだし。」
「それじゃあ行きましょう。海野さん。私の言う通りに動いて下さい。」
渚は無表情のまま、言う。
「うん。わかった。」
“何が始まると言うんです?”
“わからん。”
次回『脳筋』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます