第3話 "幼なじみ"の枠 side文乃
クリスマスの前日、私は礼にイルミネーションを観に行こうと誘われた。
妹の
礼とクリスマスデート。
恋人とのクリスマスデートは実は少し憧れがあって、一度はしてみたかった。
クリスマスイブにお父さんがお母さんにプロポーズしたんだって言ってた……から。
こんなのに憧れてるなんて礼に言ったらどう思われるか分からないし、言うつもりはない。
家で一人ファッションショーを開きながら支度をしていると、もうそろそろで礼が家に来る時間になっていた。
礼の前だといつも素直になれなくって、余裕あるように見せたりしてみるけど。
結局は全部バレてるんだよなぁ、多分。
バッグの口を閉めたところで、家のチャイムが鳴る。
玄関のドアを開けると、灰色のコートを着た礼が少し寒そうに立っていた。
「メリークリスマス、文乃」
「あっ、礼。えっと……メリークリスマス」
ああどうしよう。
想像以上に格好よくて、まともに目を合わせられないよ。
でも、そんなこと考えてるなんて知られたくない。
恥ずかしい気持ちの方が勝ってしまうのだ。
礼は私が靴を履くまで待ってくれた。
「支度できた?」
「……うん」
「よし、じゃあ行こう」
戸締まりをして、カバンに鍵をしまう。
隣に並んで歩き始めると、礼は当たり前のように私の手を取った。
優しく握ってくれる私より大きな手。
ただの幼なじみだった期間のほうが圧倒的に長くて、付き合ってるはずなのにまだ“幼なじみ”という枠から抜けられていない気がするのは……嫌だよ。
今日この聖夜に、私たちの間でなにかが変わるといいな。
「柚ちゃんは
歩きながら私はふと、そう口にする。
柚ちゃんは礼の一つ下の妹で、現在中学三年生。
朔くんは、柚ちゃんの幼なじみであり同級生でもある。
礼はふっと笑った。
「本人は違うんだって言ってたよ。あいかと
あいかちゃんと伊織くんもまたまた幼なじみであり同級生。
そもそも朔くんは星が好きだし、星空観察と称してしまったことで特に予定のなかったあいかちゃんと伊織くんがついてきたってとこだろう。
とまあこれは私の勝手な推測なのだけれど。
もうすぐ受験の控えている四人にとって星空観察は、きっといい息抜きになるんじゃないかな。
そう考えながら、私たちはイルミネーション会場に向かっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます