第2話「世界樹からの願い~おっさん転生する~」

「……助けて欲しい」


何か声が聞こえた。


大きな激痛が数秒すると、痛みはあっさりと引いていった。

数分暗闇が続き、体の感覚がぼんやりとしてくる。


死ぬときって、意識があるんだな


これから私はどうなるのだろう。

この意識も次第に消えていくのだろうか。

ああ……、だが怖くはない。

暖かく、光に包まれ、心が軽くなっていく。

「助けてくれまいか」


私の声じゃない。

ああ・・・、いつ以来だろう、私を呼んでいるのか?

嬉しい、人の最後は一人というが。

声をかけられることはあっても、”呼ばれること“はなかった。


「どこです、私を呼んでいるのですか?」

「助けて欲しい」


はっきりと聞こえた。

穏やかで徳の高そうな男性の声だった。


「そちらへ行きます」


暗闇から一粒の光が現れたと思うと、どこまでも広い空間に出た。

私の体は今どうなっているのだろう?

感覚はないところを考えると、そういうことなんだろう。


「こっちへ」


もはや、私を呼ぶ声に疑いはなかった。

呼ぶ声に耳を澄ませるように意識を向けると、遠くから近づく小さいな物体があった。



「こ、これは……」


私の背丈くらいだろうか、青々と葉を耕した木が現れた。

だが酷く弱っている。

葉や枝はどれも下を向き、ところどころ枯れている。


「すまぬ」

声を出しているのはこの木だ。


「いたるべき魂であるにもかかわらず、声をかけてしまった」

「いえ、あなたはいったい?」

「私は……世界樹」

「世界樹」


世界樹と伝奇小説などにある天をつくようにそびえる大木だ。

だが、目の前にいるこの木にはその陰りもない。


「私は……死にかけている」

「死にかけている」

「もう葉を生い茂る力もなく、体を維持する力もない、それはすなわち世界の終わり」

「世界の終わり?」

「私は、世界樹はその世界を支える大樹であり、その根は世界に張り巡らされている、だから、私の世界は死にかけている」

「そ、それは……」

「助けて欲しい、私の世界に来て欲しいのだ、そなたの力でどうかわたしを支えてはくれないか」

私の力を求めているのか?だが私は今しがた死んだ身、何ができようか。


「私の愛した世界が、このまま私と共に朽ちようとしている、どうか助けてくれまいか?」


このお方は、私のことを本気で求めている……


「わかりました」


喜んでくれたのだろうか、木が微かに輝いた気がした。


「ありがとう、あちら側で待ている」

「はい、では……」

私がそう考えると、私の意識がまたぼんやりとしだした。


「猶予は短いかもしれない、出来るだけそなたの力を伝えよう」


?、伝えるとはいったい?


「ありがとう、……心優しき人よ、そなたこそが本当は誠に求められる者だ」


「待ってください、伝えるとはいったい」


うう、意識が……


「そなたがしてきたことだ」


私が?私は……何をしてきたんだ……。









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