ゴミ拾いおじさん、異世界行ってSDGsで世界樹を救う

濵明之介

第1話「求められし人材~おっさん倒れる~」

「ありがとうございます」

月に1度

あるかないか

そんな言葉がこうやって毎日ゴミ拾いをする動機になった。

結婚もせずに定年退職した自分を救ったのは、ゴミ拾いだった。

別段趣味がないわけではない、だが年を取ればどうしても足が遠のき、手近な趣味を探す。


「ふう・・・、!ぐぐ・・・」


誰にも話すことなく、話されることもなく年月を重ねると、寂しさが津波のように押し寄せる。

何か人とのつながりを感じたい。

いや、「ありがとう」と言われたい、感謝されたいという承認欲求を求め、始めた。

始めは、家の周りを1周、次は近くの公園、遠出して海辺の清掃活動に参加と、人に見てもらえる場所まで出向いた。

私は、

活躍している。

小さなプライドを受け取る代わりに、ゴミを拾う。


「はあ……、やっとまともになったな」

そういって振り返る道はゴミだけはなく、雑草もむしり取り、歩道とガードレールと敷地のコントラストが描かれ、あたかも自然と人工物が一体となったような道がある。


「はぁ~……、あぐ!」


し、心臓が痛い。

息が上手くできな、頭もくらくらする。

ああ、これはきっと心臓のせいだ、体の血液が上手く周らないから頭も痛いんだ。


「がはぁ!あ……」


だ、だれか……

いや、こんな早朝に誰もいるわけないか。

これは、視界が暗くなってきた、これは、危ないのであろうか。


「う、うう……」


もう、立ってられない。

そうか、今日か、今日なんだな。

もう何年たったのだろうか?10年?いや20年以上だ!そうだそうだ。

俺は、定年退職してこの家、この場所、この町をずっと、清掃してきた。

ああ。

本当に良かった。

最後に見る景色がこれで。

ああ、綺麗な道だ。

ブロックが敷き詰められた歩道、まっすぐに整列されたガードレール、側溝から敷地に伸びる芝生とそこから伸びる野花。

ああ、綺麗だな。

誰かが掃除した道は……。


「ありがとう、……さようなら」





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