第4話 聖女の泉へ
「あの、実は案内してもらいたい場所があるんです。早速ですけど時間をもらえますか?」
「王からもあなたに協力をと言われておりますし構いませんが……どちらへ?」
焦っている時ほど気の利いたセリフは出せないわけで。僕は見切り発車のまま言葉を紡いでいく。そこまで疑問は抱かさずに済んだようだ。
「聖女の泉を案内してもらいたいんです。アインスが命を落とした場所に」
彼らを見つめてみる。先ほどまで受け答えしてくれていたディアが急に黙り込んでしまった。シルテベートは興味がなさそうにそっぽを向いている。
「もちろんいいよ。ついておいで」
それに答えてくれたのはひときわ嬉しそうに微笑むヴィーロスだった。
ーーーーー
「ここが聖女の泉だよ」
アティークロウ城からそこそこ歩き、案内されたのはとても美しい場所だった。芝生と花が共存する中心に、両手から水を落とす聖女の像がある。その綺麗さに僕は思わず息を呑んだ。
「聖女の左手側が現場だ。気が済むまで見たらいい」
「ボクとシルくんは後から向かうね〜」
「あ、おい……!」
ヴィーロスは突然シルテベートの腕を引っ張って聖女の右手側へ行ってしまった。シルくんというのはシルテベートの愛称なのだろう。残されたディアと共に僕は東側のエリアに足を進めた。
すぐに花束の山を見つけて足が止まる。勇者へ手向けられたものだろう。かなりの量だ。
「……アインスさんはこちらで亡くなったんですね」
「いろいろな国から今も届き続けているそうですよ。世界を救ったアインスの死をみんなが悲しんでいるのでしょう」
「世界を救った勇者なんだから当然だね」
イッポが僕の首元にギュッと抱きついてくる。こういう悲しい話題はあまり好まないらしく、こうして甘えてくることが多かった。
「うん……」
僕とイッポも花を供えて祈りを捧げた。彼が魔王城に出向いて魔王を倒さなければ、この世界はきっと恐ろしい未来を迎えていただろから。僕も救われた一人だ。だからこそ、彼の死をちゃんと解き明かさなければならない。
「……?」
祈りを終えた僕は、草むらの方に何かが光るのを見つけた。イッポはディアと何かを話しているようで、僕は一人でそれに近づく。僕が芝生を踏む音とは別に、何かが草を揺らす音がした。
次の瞬間、それは勢いよくこちらに飛び込んでくる。
「うわっ!!!」
一瞬でとらえたのは逆さまにしたビーカーに手足が生えたような生き物だった。この気の抜けたような表情は前に図鑑で見たことがある。
「ポーイか……!」
ポーイ。それは世界に蔓延る低級モンスターだ。魔王が倒された後に大量発生していると噂で、勇者アインスを葬ったとされるモンスターでもある。
東の国て調達した剣を引き抜き、僕は咄嗟に斬りつけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます