第47話 里帰り
翌日、領都から出発してのんびり徒歩の旅だ。領都から出て周りに人がいなくなったころで小型のタブレットタイプの通信機を利用する。
「音声通信は良好だね。さすがに映像は無理みたいだけど」
『問題ございませんな』
『しっかりと聞こえますわ』
馬を使うかと騎士団で聞かれたけど、一人旅だし世話も面倒だしあとで空間跳躍を使うから断った。
周りに人がいないのを確認して、今は通信機のテスト中。
統一宇宙軍では惑星から惑星への通信も当たり前のように送られていたし、技術的な面でいえばいくらでも可能なのであろうが、今の設備では映像は無理だった。
音声だけでも可能だったのは行幸である。ドローンにメール機能も試させたので文字も問題ない。まあ二人は使えないけど。
うお、メールが大量に!? サポートドローンたちから作業の進捗状況の報告と作業状況に関する質問がたんまり送られてきた!
「あとで確認しよ」
というか戻らないとだな。
空間跳躍で基地に戻り二人に挨拶。街の森では虫型の魔物を追い出すべく、大量の魔物除けのお香が焚かれているのが見える。
到着するとサポートドローンが一体、二体、三体と。
流石に数が多すぎるから同期できる限界を超えたのだろう。そのまま細々発生した問題に対し指示を与え、それを伝えると次の質問とそれが続いていく。
管理用のアンドロイドが真剣に欲しいです! どこかにマザーコンピュータ落ちてませんかね!?
「ただいまー」
「おお、クラ坊か! おかえり!」
「おおー、久しぶりだな! でも早いか?」
「早いだろ! 村から出たらなかなか帰って来ないやつも多いのにな! 仕事クビか!?」
「クビか!」
「まあクラフィは生意気だからな!」
「仕方ねえな!」
「「「 がはははははははは! 」」」
「クビじゃねえし。それと土産はいらないようだな。酒とかだが」
「「「 すいませんでしたー! 」」」
大人の土下座は見たくなかったです。
「クラフィ、おかえりなさい」
「ただいま母さん」
何かしらの仕事にでていたのだろう。外にいた母さんが出迎えてくれた。
そこに追従してくる女性陣たち。おお、髪の毛がきれいになってる。
「わあ、みんな綺麗になったね」
「フレイムトランぺッターの油もいいけど、こっちを覚えるともう他は使えなくなるわね」
「領主様のところから使いが来てね。定期的に持ってきてくれるようになったのよ」
「あ、一応樽でもってきてるから。共同浴場にでもおいておくね」
「「「 きゃー! 」」」
お酒だけでは芸がないし、出張後だから村には色々と物が溢れているだろう。そう思って用意しておいた品だ。
「えー、酒もってこいよ」
「そうだそうだー」
「え? 出張あったんじゃないの? いつもいっぱい持って帰ってきてるじゃん」
「「「 もう飲み切った 」」」
「金があっても買える量に限界があるんだよな」
「ああ、そういう理由もあるのか」
村の人口、お酒が飲める人数を考えると相当な量が必要になるのか。魔法の袋で運搬できるとはいえ、それだけのお酒を用意するのが大変だ。
あと女性陣がお怒り気味ですからお口には気を付けた方がいいよ?
「あとは布と塩と他の調味料と。鉄もインゴットで持ってきたよ」
布は普通に王都で。鉄はトンカッケに頼んで用意してもらった。鍛冶師のドリーのところに持っていくつもりだ。
「気が利く子ねぇ」
なんかすっごい女性陣に頭を撫でられる。
「おう、鉄。見せてみろ」
「あ、ドリーおじ」
「おう。はよ、はよ」
「どこからでてきたのさ」
「酒って聞こえた気がしてな」
この体の大きなおじさんは鍛冶師のドリーおじだ。一応弟子はいるが、村で使っている金属製品の大半は彼の作品である。
「これ。用意してくれたのはドワーフの人」
「ふむ。王都でこれか。ならそこまで悪くはないな。そっちの武器も見せてみろ」
「あ、うん。引っ張らないで?」
腰に固定していたナタを取ると、強引に持っていこうとする。刃物だから危ないんですけど。
「……ほお、魔化されたナタか。面白いな。だが研ぎが甘い」
「そうなの?」
十分な切れ味を誇ってくれていますけど。
「砥いでおく。明日にでも取りに来い」
「了解ー」
「残りの鉄もその時に持ってこい。しばらく取りにいかなくていいなら楽になるな」
「あー、鉄鬼兵とかいるところ遠いからね」
体が鉄でできている魔物がでるダンジョンがあるので、村で鉄が少なくなったらそちらに乗り込むのだが、精錬をするので大量に討伐をしないといけないのだ。
しかもそのダンジョンはあまり深くないから、魔物の数も少ないので数の確保に時間がかかるのである。一か月くらいダンジョンの近くで過ごさなくちゃいけないので、大変なのだ。
しかも他の仕事が少ない冬にしか取りに行けないのだが……雪山でひと月とか控えめに言っても地獄なのである。
だからこうして外から持ってくるとドリーおじは喜ぶのである。
「ただいま、兄さん」
「おー、帰ったか! おかえりクラフィ」
母さんはまだ仕事があるからと言って解体小屋の方に向かっていった。共同浴場によって洗髪液をおいていき、村長のところに行って挨拶をし塩と酒を渡す。生活必需品だから配布や残った分の管理を任せるためだ。
まだまだ元気なばあちゃんに布のお土産を渡して、代わりにいつもの漬物をもらう。久しぶりのきゅうり、うまっ! うまっ!
家に戻ると、帰ってきたオレに熱い抱擁をしてくれたのは兄さんだ。
「父さんは? それと義姉さんも」
「父さんは見回り当番だ。ソーカは散歩行くって言ってそこから見てない。母さんは仕事だ」
「母さんにはさっき会ったよ」
「お? そりゃよかったな。会いにいかないで済んだか」
「そうだね」
戻ったことを伝えにいかないと、拗ねられるから。
「しかしいいタイミングで戻ってきたなぁ」
「いいタイミング?」
「ああ。攻略やるぞ」
「え? ダンジョン? いらないの?」
攻略、つまりダンジョンの攻略だ。
黒い森に近いこの辺はダンジョンの発生はそれなりに多い。しかも村の人間の見回り範囲も広いので、氾濫が起きるほど成長する前に発見される。
内部を確認し村にとって資源になると判断された場合は残されるが、そうでない場合は攻略されるのである。ダンジョンマスターがいるダンジョンは大体攻略対象だ。
攻略対象のダンジョンは、発見者が攻略するの通例だ。つまり発見者は父さんか兄さんということになる。
「この間村の人らが行ったって聞いたけど」
「それとは別件だな。今回は村の近くで、多分ダンジョンマスタータイプ。虫系だ」
「うげ」
虫系は毒と罠が多いんだよね。ほとんど食えないし魔石くらいしか素材にならない。
「嫌になるよなぁ。まあ行かなきゃいけないんだけど」
「領都に戻ろうかなぁ」
「あ、父さん帰ってきた」
うわーい、メンバー入りに数えられてるぞーう。
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