第24話 ダンジョンの授業
「クラッドフィールド、まだか!?」
「別に構いませんけど、せめて朝食を食べられてからにしませんか?」
オレはもう食べましたけど。
「む、そうだな」
「それと使用人棟に来るなとはいいませんが、せめてノックをしてください」
「それはすまなかった……そうだ! 軽く体を動かすか!」
「そんな時間はありません」
朝をなんだと思っている。
「む、時間ならまだあるだろう?」
「運動をしたら汗をかきますから。学園へ向かう前に湯あみもしていただかなければならなくなりますよ? お嬢様は髪が長いですから乾かすのに時間もかかるでしょう?」
「そ、そうだな」
うずうずしている。顔もどこかニヤけているし……。絶対に落胆すると思うんだけど。
「朝はマーサ様もシャーリーさんたちも忙しいんですから、あまりお手を煩わせてはいけませんよ?」
「私を手のかかる子供のように言うな!」
「ならばお部屋に戻ってください。お嬢様を探してメイドたちが涙目になっていますよ」
「そんなわけ」
「いましたぁ! アリアンナ様! 朝から姿をくらまさないでください! 髪の毛のセットをしますよ!」
「涙目じゃなくて怒り目でしたね」
シャーリーさんはお怒りでした。
「クラッドフィールドくんも! 簡単に招き入れない!」
「ノックもせずに突入されたもので」
だから主なのにイスすら勧めてません。
「アリアンナ様!」
「分かった、すぐ戻る。クラッドフィールド、準備をしっかりしておけよ!」
「かしこまりました」
朝はみんな忙しいんだから、あまり手を煩わせてはいけませんよ。
「……しかし、何をもっていけばいいのやら」
以前と違い魔法の袋がないから全部背負うなり装備するなりしないといけないのだが。
「鉄板、いらないですよね?」
そもそも焼いて食べれる魔物、あんまりいないからいいか。
「では今よりダンジョン攻略を始めます。申請のあったパーティで人数に変動のあったところはありませんね?」
先生の言葉に生徒たちは頷く。
「楽しみだな!」
「ええ、楽しみですわ!」
「イヴリン様、落ち着いてください」
「お嬢様もです」
男性ばかりのチームの中、女性が三人のウチのチームは目立つのです。もちろん女性がいないわけではないですが、どちらかといえば守られ要員です。
ダンジョン攻略とはいえ、学園の授業。しかも貴族の学校のだ。確実に安全が確保されているだろうから、きっとお嬢様方から不満がでるに決まっている。
何度もそう伝えようとしているんだけど。
「―――!」
うん、めっちゃキラキラしてる。こんなお嬢様に引率付きのダンジョン攻略ですよとはなかなか言えない。
「地図のルートから外れないこと、怪我人が出た時点で申し出ること、中にいる騎士の指示には絶対に従うこと、ダンジョンコアのコアルームには近づかないこと。これだけは絶対に守ってください。特にコアルームには近づかないこと。密偵とみなされて問答無用で斬られますからね?」
怖すぎません?
「「「 はい 」」」
「時間を分けて順番に入ってもらいます。では最初のチームから」
このダンジョン攻略の授業は、希望者のみの授業だ。
貴族の一員たるもの、魔物と戦う力を常に持っていなければならない。その考えのもとに用意された授業である。
男性の参加者は多い。大半の生徒とは言わないが六、七割くらいの生徒が参加している。跡継ぎが実力主義の貴族家がそれなりにあるのもあるが、実家を継げない次男坊三男坊が一定数いるからだ。
このダンジョンは王都から二時間ほど移動した場所にある、騎士団が国から管理を任されているのだ。
つまり生徒たちから見れば騎士団へアピールする絶好のチャンスなのである。実際にスカウト担当の者が目を光らせているらしい。
こういう時だけでなく、普段の剣の授業も真面目に受けてもらいたいものである。
ちなみに女性の参加者は多くない。危険だからというのもあるが、学園へ通う目的がそもそも違う。
彼女たちは縁を繋ぎにきているのだ。
婿探しだけでなく、同格や格上の貴族家とのつながりを作りに来ている生徒が多い。魔物が跋扈する世界で生きているのだ、味方は多い方がいい。
いつ自分の領内に魔物による氾濫するか分からないのだ。
そんな時に頼りになるのが近くの領を管理する貴族家なのだが、ご近所過ぎると戦力があてにできないことが多いのだ。ご近所さんも自分の領を守らなければならないのだから。
もちろん国に報告をして国の戦力を頼りにすることもできるが、彼らが次にあてにするのが親戚や知り合いだ。
自身の兵力の高さは当然だが、外部から戦力を引っ張ってこれるのもその貴族の力の指針である。
「あからさまな方も中にはいらっしゃいますけど」
「どうした?」
「いえ、大丈夫です」
男性チームの中でちやほやされている女性が何人か見受けられるのは、何狙いなんですかね? 男性同士で喧嘩にならないといいのですが。
「次はイヴリン様とアリアンナ様の組みにございます」
「ああ!」
「行きますわよ!」
「「 はい 」」
そこらから聞こえてくる装備自慢に辟易していたらオレたちのチームが呼ばれた。
「……クラッドフィールドくん。その背中の大きな鉄板は盾か何かで?」
「ただの鉄板です」
「そ、そう。必要なのですか?」
「必要だ!」
「必要ですわ!」
「……とのことです」
肉のダンジョンで文字通り味をしめたお嬢様からの強い要望でご用意いたしました。イヴリン様もにっこりである。
学校の授業の一環なので、大人の護衛がついてきません。その状況ではイヴリン様も魔法の袋を持ち出せず、大きい荷物は背負わなければなりません。
調味料とかもあるからしんどいです。
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