第22話 洗髪液
「と、いうわけで知恵をお借りしたいのですが」
「確かにすごい綺麗な髪ねぇ。ほんとは何を使ってるの? 分けてくれたら知恵を貸してもいいわよ」
うう、足元を見られる。髪の毛の一件、思いつかなかったのでイセリナさんに相談をしてみることに。王都の冒険者ギルドの職員だし長命なエルフだし、何かいい情報を持っているだろうなと聞いてみることにした。
「……今度用意いたします」
「てか、それじゃダメなのかしら」
「ダメなんですっ」
詰め替えが大量にあるけどいつかは枯渇する。それに商品化の話も出ているのだ。
コンテナハウスにあるスキャナーで通せばシャンプーに適した配合を調べることが可能だが、シャンプーに適した素材で試さないと意味がない。
「よく聞くのはシーウィーダーのツタから抽出した液体とか、ビオグレープの皮をすりつぶしたものとかだけど……まあ一般的で貴族ならみんな使っているやつね」
「……やっぱりそういうのですか」
「一応あるけど、あたしも使ってるやつ。でも高いわよ」
「ちなみに、なんですか?」
「フレイムトランぺッターの油。アネッサに教わったやつね」
「ああ、母さんの……」
そういえば髪の手入れに使ってたな。食用なのにもったいないとかいつも思ってた。
「そっちは貴重だからあげられないけど、それ以外は在庫あるわよ? いくつかもってく?」
「ありがとうございます。試してみます」
「……必要なさそうだけど」
「オレの安寧のためにも」
昨日の一件以降、もともと気にしていたのか屋敷のメイドさんたちからの視線が厳しい。
目を合わせようとすると背けられるし。
「誤魔化せるの?」
「最悪フレイムトランぺッターの油って言います。簡単には手に入らないらしいですから」
「販促ルート抑えてますもの」
「ここに諸悪の根源がいましたか」
「魔物素材を扱うのがうちの仕事ですもの! それに元々数が少ないのが原因よ? だいいち油だから運ばせるのも大変なのよ?」
「うちの村から運べれば……」
「どんだけ遠い距離を運ばせる気よ。それだけで価格が爆上がりだし、そもそもあんたのとこの村はギルドからの依頼を受けないじゃない」
「や、知らないですけど」
でも確かに依頼があったからこいつを倒せとかあいつを倒せって指示を見た記憶があんまりない。薬の材料になるやつくらいかな?
「村で消費する分以上は過剰だって考えがあるみたいね。冒険者とは根本的に考え方が違うわ」
「そう言われるとそうかもしれませんね」
獲りすぎは良くないと教わったし、必要な時のために力をためておけとも教わった。まあ僕は空間庫があるから物を無駄にしないっていうのもあるし、そもそもの考え方も転生前の常識に引っ張られている分もある。だからある程度過剰に獲るのに抵抗はないんだけど。
「とりあえずいただいていきますね。今度お礼の品を」
「洗髪液でいいわよ?」
「……できるだけいいものを用意します」
「とっておきのを期待しているわね?」
さっき表に出せないですって言ったじゃないですか!
「こちらをお納めください」
「ああ、確かに預かった。マーサ」
「はいお嬢様。お受け取りいたします」
「い、一応体質によっては……」
「存じております」
「はい」
イセリナさんに選んでもらった洗髪料に適した素材。それをコンテナハウスの成分調査スキャナーで取り込み、そこから洗髪液を開発した。
できるだけ高価なものは使わず、王都で手に入りやすいものの中でという縛りの中での開発だ。材料の中には成分の分離をさせるために煮込んだり濾したりしないといけないものもあったので、それなりに大変であった。
まあやるのはサポートドローンだけど。
もちろんいきなり渡したりはせず、完成品をイセリナさんに試してもらった。翌日から明らかにご機嫌がよろしくなったので、満足してもらえたんだろう。
材料が材料だから大量生産も可能だ、というかもう樽一つ分作った。でもなんかありがた味が足りない気がするので、ワインの瓶の中に入れてお渡しすることにした。
「できるだけお湯をお使いください」
「お湯を? 分かりました」
「はい。しっかり泡立ててから髪になじませるようにしてください」
「実際に試してみないと分からないわね。私とシャーリーの二人でさっそく今日から試してみましょう」
「な!? 私もすぐに使いたいぞ!」
「アリアンナ様、すぐには無理です。まずは我々が試します」
「私だって髪がゴワゴワで嫌なのだぞ! 第一クラッドフィールドが私を害するなど考えられないだろう!」
「それとこれとは話が別にございます」
「これだけしかないのに!」
「また用意してもらえればいいんです。場合によっては工場も用意いたします」
そういえば量産して商品化をとかって話もでてましたね。
「私もすぐに試したい!」
「ですからいけませんと言っているんです」
「ずるいぞ!」
「ずるいとかずるくないとかのお話ではございません」
マーサ様慣れてるなぁ。
「それよりもお嬢様、クラッドフィールドに渡すものがあるでしょう?」
「あ、そうであった! クラッドフィールド! 受け取れ!」
「?」
首を傾げると、お嬢様が机の上に置いてあった革袋を渡してきた。
「これは?」
「代金だ!」
「代金ですか?」
「わざわざ作ってもらったんですもの。当然でしょう?」
「ありがとうございます」
「そうだな」
あ、そういえば。
「お嬢様」
「なんだ?」
「これがお買い物です」
「これがお買い物だったのか!?」
「なんでしょう、合っているのですが何か違うような気が……」
え? 買い物でしょこれ。
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